23日の日本経済新聞朝刊総合5面に「再生エネ投資 米大手参入 73億円調達~日本事業、3年で10倍」という記事が載っている。見出しを見ると「『米大手』がこれから『再生エネ投資』に『参入』する」と理解したくなる。しかし「参入」したのは2014年らしい。なぜこんな記事になってしまったのか。全文を見た上で考えたい。
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【日経の記事】
太陽光発電所など再生可能エネルギー資産を運用する、米ハドソン・サステナブル・グループが日本市場に本格参入する。22日、国内外の投資家から73億円を調達した。自己資金と合わせ、今後3年で発電容量を10倍の300メガワットまで積み増す。脱炭素の流れが強まる中、日本で再エネの需要が高まるとみて事業を拡大する。事業拡大に合わせ、日本拠点の人員も増やす。
ハドソンは世界で30億ドル(約3100億円)以上を再エネに投資している。日本では2014年に福岡県の太陽光発電所をドイツ企業と共同で取得した。日本政府が再生エネ推進の方針を出し、「日本での継続的な事業拡大の好機」(ニール・アウエルバッハ最高経営責任者)とみて投資を積極化する。
すでに北海道から鹿児島県まで全国33件の太陽光発電所を豪金融大手マッコーリーグループと中国のトリナ・ソーラーから約100億円で取得した。いずれも2メガワット以下の中規模発電所で、合計発電容量は約30メガワットにのぼる。22日に発行した私募債券はこれら33の発電所を投資対象とする。
今後も中規模の太陽光発電所を中心に取得を進め、3年で今回の10倍の300メガワットまで積み上げる。現在3人の日本拠点の人員も拡充し、将来的には保有する発電所の保守・管理やファンド運用も自社で展開する計画だ。
◎「本格参入」には要注意
推測だが、今回の出発点は「米ハドソン・サステナブル・グループ」による「私募債」発行だろう。これを基に記事にできないかと記者は思ったのではないか。しかし「私募債」発行だけでは弱い。そこであれこれ話を加えて「日本市場に本格参入」と打ち出したのだと考えれば腑に落ちる。
これまでが実験的な「参入」にとどまっていたのならば責められる話ではない。記事では「2014年に福岡県の太陽光発電所をドイツ企業と共同で取得した」と記しているだけで、規模には触れていない。この時点で立派に「本格参入」している可能性もありそうだ。
しかも「すでに北海道から鹿児島県まで全国33件の太陽光発電所を豪金融大手マッコーリーグループと中国のトリナ・ソーラーから約100億円で取得した」らしい。これは疑うことなく「本格参入」だ。
しかし記者はここまでを非「本格参入」と見なし「3年で今回の10倍の300メガワットまで積み上げる」ことを以って「本格参入」としているようだ。ご都合主義が過ぎる。
そして見出しを付ける段階では「本格参入」から「本格」を外し「再生エネ投資 米大手参入」としてしまう。2014年に「参入」しているのに、今回新たに「参入」するかのような記事の出来上がりだ。
インチキ臭い「本格参入」を量産する今のやり方を続けて良いのか。日経はそろそろ考えるべきだ。
※今回取り上げた記事「再生エネ投資 米大手参入 73億円調達~日本事業、3年で10倍」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210123&ng=DGKKZO68454910S1A120C2EA5000
※記事の評価はD(問題あり)
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