株式投資で配当に着目する意味はほぼない。しかし、なぜか「配当利回り」に目が行くようだ。週刊ダイヤモンド12月19日号の特集「高利回り商品 総点検」でも「安心して持てる高配当株 5つのチェック項目を伝授」という記事で「高配当株」を取り上げている。そして「預金金利がほぼゼロの状態が続き『高利回り』に対する需要は強い」「超低金利は今後も継続する可能性が高く、高い(配当)利回りは魅力的なのも事実」などと書いている。
コスモスパーク北野(久留米市) |
配当利回りに関して記事を書く場合には以下のことを考えてほしい。
(1)預金金利との比較は不適切
「配当利回り」と「預金金利」を比べる意味はない。100円の預金に10%の金利が付くと110円になる。しかし100円の株で10%の配当をすると90円の株と10円の現金が残る(税金などは考慮しない)。合計は100円で変わっていない。
配当利回り50%は預金金利の10%より魅力的と言えるだろうか。100円の株だと配当後は50円の株と50円の現金(合計100円)にしかならない。配当がいくらだろうと株主に損得はない(税金などを考慮すれば別)。預金は違う。預金金利10%と50%ならば50%の方が預金者の利益は大きくなる。
株の場合、配当以外の要因でも価格が変動するので「配当すると株式価値が減る」というイメージを持ちにくい。だから多くの書き手が「配当利回り」と「預金金利」を比べてしまうのだろう。
(2)インカムゲインを切り離すな
(1)とも関連するが、株式投資の場合はインカムゲインとキャピタルゲインがある。インカムゲインを切り離して考えることに意味はない。トータルリターンのみを考えればいい。ダイヤモンドの記事でも「『配当利回り』だけで選ぶのはNG」という説明を「2019年初の配当利回り上位30社の株価騰落率」という表に付けている。
「『配当利回り』だけで選ぶのはNG」というのは間違いではない。だが「配当利回り」も重要な指標だと誤解させているところに罪を感じる。「『配当利回り』は見ないでトータルの利回りで考えろ」などと助言すべきだ。
記事では「高すぎる配当性向は減配リスクが高いことの裏返しだ」とも書いている。業績悪化に伴い「減配」となる状況は株主にとって歓迎すべき事態ではない。だが「減配」ではなく業績悪化が問題なだけだ。
業績好調の中での「減配」であれば気にする必要はない。その分は株価が高くなる。自分が成長株に投資するならば無配の方がいい。配当よりも成長投資に資金をつぎ込んで株式価値を高めてくれることを願う。
企業に余剰資金が生まれた時に配当として株主に還元することを否定はしない。しかし配当が増えたからと言って株主として喜ぶ気にはなれない。その分は株式価値が低下しているからだ。
配当利回りに着目しても意味がない--。投資に関する書き手にはこの認識を持ってほしい。
※今回取り上げた記事「安心して持てる高配当株 5つのチェック項目を伝授」https://diamond.jp/articles/-/255410
※記事の評価はD(問題あり)。篭島裕亮記者への評価も暫定でDとする。
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