30日の日本経済新聞夕刊1面に載った「バイデン政権、広報幹部全て女性に~人種も多様」という記事は「多様性」について考えさせられる内容だった。最初の段落で永沢毅記者は以下のように書いている。
夕暮れ時の巨瀬川と耳納連山 |
【日経の記事】
米大統領選で勝利を確実にした米民主党のバイデン前副大統領は29日、次期政権の大統領報道官に元国務省報道官の女性、ジェン・サキ氏を起用すると発表した。同氏を含む7人の広報チームの中枢幹部はすべて女性で固めた。多様性を重視する姿勢を打ち出す狙いがある。
◎「多様性」はないような…
「7人の広報チームの中枢幹部」を「すべて女性で固めた」場合「多様性を重視」と言えるだろうか。「広報チームの中枢幹部」に限れば性別に関して「多様性」はない。
政権全体で見れば「多様性」の「重視」になると反論する人がいるかもしれない。それも一理ある。だが、範囲を恣意的に決めていいならば、日本でも職場における「多様性」は確保できている。就業者数に占める女性の割合は4割を超えているからだ。
となると「全体ではそうかもしれないが、女性が極端に少ない職場もある」「管理職比率は非常に低い」といった反論が出てきそうだ。それに対しては、だったら「7人の広報チームの中枢幹部」を「すべて女性で固めた」場合はどうなのかという話に戻ってくる。
今回の場合「多様性を重視」と言うより「女性を重用」と説明する方がしっくり来る。
「多様性」の問題はかなり難しい。厳密にやろうとすれば様々な弊害が出てくる。記事では「人種も多様」と書いている。仮に性別と人種にだけ配慮して「多様性」を確保しようとすると、なぜその2つだけなのかとの疑問が生じる。年齢、収入、学歴など色々な項目で「多様性」は考慮できる。社会の多様な集団で様々な項目の「多様性」を確保して人選を進めることは果たして現実的なのか。
それが無理だからといって性別や人種に限るのが合理的とも思えない。結局、「多様性」は突き詰めないに限る。厳密に考えていくと必ず「超えられない壁」にぶつかるはずだ。
※今回取り上げた記事「バイデン政権、広報幹部全て女性に~人種も多様」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201130&ng=DGKKZO66790130Q0A131C2MM0000
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新聞に限らないし、今に始まったことではないが、この記事のごとく何も考えず、「多様性」テンプレートに固有名詞を乗っけただけという報道ばかりになっている、その典型例。マスコミ離れするのも当然。もっとも高齢者は、こういう決まり切った構成、文章の方が安心して読める、と新聞編集者は思って記事の書き方を教えているのだろう。
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