2020年11月22日日曜日

日経ビジネスで「罰則付きクオータ制」の導入を求める上野千鶴子氏に考えてほしいこと

日経ビジネス11月23日号に載った「時事深層~日経ビジネス電子版『Raise』で議論 『おっさん粘土層』を壊せ」という記事を読むと「クオータ制」導入論は相変わらず非論理的なものが多いと感じる。「社会学者の上野千鶴子氏は『罰則付きクオータ制』の導入で『女性登用を阻む“おっさん粘土層”を壊せ』と訴え」ているらしいが、記事中でまともな論理展開はしていない。

大阪市中央公会堂

記事の全文は以下の通り。

【日経ビジネスの記事】

安倍晋三前政権が掲げた「女性活躍」の方針を引き継いだ菅義偉政権。だが、進まぬ現実に政策は後退気味だ。2020年までに女性管理職比率を30%にするという方針は「20年代の可能な限り早い時期」に先送りされている。社会学者の上野千鶴子氏は「罰則付きクオータ制」の導入で「女性登用を阻む“おっさん粘土層”を壊せ」と訴える

菅義偉首相は政権発足後の初めての所信表明演説で「これまで進めてきた女性活躍の勢いを止めてはなりません」と語ったが、現実は厳しい。11月11日に開催した男女共同参画会議で、安倍晋三前政権が掲げた「2020年までに女性管理職比率30%」という目標を「20年代の可能な限り早い時期」に先送りすることを改めて確認した。帝国データバンクによる調査では同比率は8%弱。「女性活躍」という政策の歩みの遅さは深刻だ。

日経ビジネス電子版の議論の場「Raise(レイズ)」のシリーズ「みんなで考える日本の政策」では、ジェンダー問題が専門の上野千鶴子氏へのインタビューを基に、読者とともにジェンダーギャップ解消の政策について考えてきた。インタビューの上・下には合計で約60件のコメント(16日時点)が寄せられ活発な議論が交わされている。

19年末に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数では、日本は153カ国中、過去最低の121位。こうした現状に上野氏は、「ぼうぜんとしている」と語り、「16年に女性活躍推進法が施行されたが、全く実効性がない。努力目標だけで罰則規定がないから」と指摘。組織内の管理職などの一定比率を女性に割り振る「クオータ制」を、罰則規定付きで導入する必要性を訴えた。

上野氏の主張にはおおむね好意的な意見が多数を占めている。SunValleyさんは「クオータ制、大賛成です。(中略)やはりクオータ制のような社会構造的なシステムを導入せずには、変わりません」と賛同する。

一方で、クオータ制だけでは不十分という意見も多数あった。wkb48さんは「『女も雇ってやる』みたいな意識でクオータ制なんて導入してもだめで、優秀な女性さん、ぜひ一緒に働いてください、って頭を下げるくらいの気持ちじゃないとだめですよ。危機感が足りなすぎる」と指摘する。「僕は従来の大企業にクオータ制を強制するよりも、女性が起業して新しい産業を作る方が現実的だと思います」(kazuhikoさん)と既存の組織には期待できないとの声も。みずおさんは、「大事なことは数合わせに走ることではなく、時間はかかりますが女性の社会進出への意識と周囲の理解を高めることが結局は重要」とコメントした。

政策の実効性を高める方法の提案もあった。小西光春さんは、女性管理職の登用率などに応じて税率が変化する「女性活躍推進税」を地方自治体が導入するなどして、女性が活躍している企業を誘致・支援する政策を提案した。

上野氏は、団塊世代の男性中心の価値観が団塊ジュニア世代で再生産され、「おっさん粘土層」となって女性の登用を阻んでいると懸念する。この悪循環を断ち切るには何が必要か。引き続き、読者の皆さんの意見をお待ちしている。


◎何のための「クオータ制」?

クオータ制」は何のために必要なのか。「女性管理職比率30%」を企業に強制するとどんな利益があるのか。そこを論じることなしに「女性管理職比率30%」を目指すべきとの前提で話が進んでいるのが気になる。

女性管理職比率30%」を達成すると株価が上がるのか、GDPが飛躍的に増えるのか、あるいは国民の幸福度が増すのか。その辺りを明らかにしないで「クオータ制」を「罰則規定付きで導入する必要性を訴え」られても困る。

女性管理職比率30%」を義務付ける「クオータ制」は明らかに男女差別だ。男女平等の原則を崩してまで「クオータ制」を導入するならば、マイナスを補って余りある大きなメリットが欲しい。しかし、それがあるようには思えない。「ジェンダーギャップ指数」は多少上向くかもしれないが「指数」が上向いても大多数の国民に直接のメリットはない。

おっさん粘土層」の話も根拠に欠ける。「上野氏は、団塊世代の男性中心の価値観が団塊ジュニア世代で再生産され、『おっさん粘土層』となって女性の登用を阻んでいると懸念」しているらしいが「おっさん粘土層」が存在するという根拠を記事中で示していない。

それに「団塊世代の男性中心の価値観が団塊ジュニア世代で再生産」されているのならば「おっさん粘土層」と呼ぶのはおかしい。「団塊世代」も「団塊ジュニア世代」も約半数は女性だ。女性の中にある「男性中心の価値観」も当然に「女性の登用を阻んでいる」はずだ。女性管理職が「女性の登用を阻んでいる」場合もあるし、女性社員が「女性の登用」を望まない場合も当然あるだろう。

それとも、同じ「世代」の「価値観」が男女で全く異なるという話なのか。ちょっと考えにくいが、もしそうならその根拠も示してほしい。

自分は男女平等主義者だが、平等が全てに優先するとは考えていない。「クオータ制」の導入で社会の様々な問題が一気に解決するのならば「女性管理職比率100%」という極端な差別を受け入れてもいいとさえ思う。

問題は「クオータ制」がもたらすメリットだ。今のところ男女平等の原則を崩してまで導入する意味は見出せない。「上野氏」には「クオータ制」を導入するとどんないいことが待っているのかぜひ教えてほしい。


※今回取り上げた記事「時事深層~日経ビジネス電子版『Raise』で議論 『おっさん粘土層』を壊せ

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00837/?P=1


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