2020年11月10日火曜日

日経「円高継続に警戒感」に感じた分かりにくさ

10日の日本経済新聞朝刊マーケット総合2面に載った「円高継続に警戒感~リスク選好、国債には売り」という記事は分かりにくかった。まず前半部分を見ていこう。

室見川緑地(福岡市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となり、外国為替市場では円高への警戒感が強まっている。米政治を巡る不透明感が後退し、投資家心理が改善。株式相場の上昇に歩調を合わせてドルを売る動きが続くとの見方が多い

9日の東京外国為替市場で対ドルの円相場は1ドル=103円台での小幅な値動きが続いた。バイデン氏の当選確実を受けて断続的に円買い・ドル売りが出た一方、国内輸入企業による実需の円売り・ドル買いが入った。

市場関係者の間では今後も円高基調が続くとの見方が広がっている。9日は日経平均株価の上げ幅が前週末比で一時600円を超えた。あおぞら銀行の諸我晃氏は「今後米国で追加経済対策への期待が高まれば、投資家の運用リスクを取る動きが続き、基軸通貨であるドルには売り圧力が強まる」と指摘する。


◎リスクオンだとなぜ円高?

一般的には「リスクオン→円安」「リスクオフ→円高」だ。最近は逆の動きが見られるとしても、なぜそうなるのかの説明は欲しい。しかし記事では「投資家心理が改善」したので「ドルを売る動きが続くとの見方が多い」と解説しているだけだ。

あおぞら銀行の諸我晃氏」も「投資家の運用リスクを取る動きが続き、基軸通貨であるドルには売り圧力が強まる」としか述べておらず、「リスクオン→円高」という流れになぜなるのかは教えてくれない。

記事を読み進めると、さらに混乱する。


【日経の記事】

投資家のリスク選好姿勢は債券市場にも影響した。相対的に安全な資産とされる国債には売りが出て、日本の長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは9日に一時、前週末比0.010%高い(価格は安い)0.025%まで上昇した。

円高の勢いがさらに強まるリスクを指摘する声も出ている。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は「英国と欧州連合(EU)の通商交渉など、先行きのリスク要因はまだ残る」と話す。投資家心理が悪化する局面では、低リスク通貨とされる円には、ドル以上に買いが入りやすい。「円が対ドルで101円台まで上昇する可能性もある」(諸我氏)という。


◎リスクオフでも円高?

投資家心理が悪化する局面では、低リスク通貨とされる円には、ドル以上に買いが入りやすい」らしい。つまり「リスクオンでも円高、リスクオフでも円高」となる。矛盾している訳ではないが、もう少し丁寧に説明しないと読者の理解は得られないだろう。

付け加えると「外国為替市場では円高への警戒感が強まっている」という書き方は引っかかる。「外国為替市場」の参加者は皆が円安歓迎ならば話は分かる。しかし「国内輸入企業」は円高を好む傾向が強そうだ。株式市場関係者が「円高→株安」を警戒しがちなので、こうした表現になるのだとは思うが「円高=悪いこと」と印象付ける書き方はできれば避けてほしい。


※今回取り上げた記事「円高継続に警戒感~リスク選好、国債には売り

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201110&ng=DGKKZO66010790Z01C20A1EN2000


※記事の評価はD(問題あり)

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