国際技術ジャーナリストの津田建二氏が週刊エコノミストで「キオクシア上場延期」に関する雑な解説をしている。「国際技術ジャーナリスト」が株式上場を扱うことに無理があったのかもしれない。誤りと思える記述もあったので、以下の内容で問い合わせを送った。
九州佐賀国際空港※写真と本文は無関係です |
【エコノミストへの問い合わせ】
津田建二様 週刊エコノミスト編集部 担当者様
10月13日号の「FOCUS NEWS~キオクシア上場延期 予定の8日前に翻意 東芝の慎重さが見え隠れ」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下の記述です。
「米国政府はこれまで中国の半導体企業を狙い撃ちしてきた。この米中貿易戦争は、最初はZTE、次にファーウェイ、そして今度は半導体製造を手掛けるファウンドリーのSMICへと対象を広げた。キオクシア上場延期発表の日に、SMICの工場で欠かせない米国製半導体製造装置の中国への輸出に許可制を米国政府が導入した。SMICはファーウェイへの半導体を製造することが極めて困難になる。今後もさらに中国の半導体企業が狙われる可能性がある。それまでに東芝は、米中貿易の安定した時期を見つけて上場することになろう」
「それまでに東芝は、米中貿易の安定した時期を見つけて上場することになろう」と津田様は書いていますが「東芝」は既に「上場」しています。文脈から考えて「それまでにキオクシアは、米中貿易の安定した時期を見つけて上場することになろう」とすべきではありませんか。
「東芝」としたのは「キオクシア」の誤りだと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
せっかくの機会なので、上記の解説にも注文を付けておきます。
「中国の半導体企業を狙い撃ち」する形での「米中貿易戦争」が激化していると津田様は解説しています。「今後もさらに中国の半導体企業が狙われる可能性がある」とも述べています。なのに、その間に「米中貿易の安定した時期」が訪れて、そこで「キオクシア」が「上場することになろう」と予測しています(「東芝は上場する」という津田様の説明は誤りと仮定します)。
「今後もさらに中国の半導体企業が狙われる」場合、「米中貿易戦争」は激化へと向かい「米中貿易の安定した時期」は「戦争」終結まで訪れないと見るのが自然です。何らかの事情で休戦期間が生まれるかもしれませんが、記事にその辺りの説明はありません。なのに「米中貿易戦争」の期間中に「米中貿易の安定した時期」が訪れることを前提に「キオクシア」の「上場」実現を津田様は見通しています。説明不足だと思いませんか。
似たような問題は他の記述にも見られます。「何としても東芝はキャピタルゲインが欲しい。というのは、売り出す株は東芝とHOYAが握っている株式であり、東芝はキオクシアの株式の約4割を持つからだ」と津田様は書いていますが「何としても東芝はキャピタルゲインが欲しい」と言える根拠になっていません。
「株式の約4割を持つ」株主が全て上場による「キャピタルゲイン」を欲しがるわけではありません。半永久的に保有するという選択も十分にあり得ます。例えば「東芝」が資金繰りや決算対策の問題を抱えていて「キャピタルゲインが欲しい」と言うのならば分かります。しかし、津田様はそうしたことには触れていません。
行数の制限があるのは分かりますが、だからと言って雑な説明を良しとしていては書き手として失格です。今後の記事執筆に際しては丁寧に説明することを意識してください。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。週刊エコノミストでは読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして責任ある行動を改めて求めます。
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた記事「FOCUS NEWS~キオクシア上場延期 予定の8日前に翻意 東芝の慎重さが見え隠れ」
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20201013/se1/00m/020/048000c
※記事の評価はD(問題あり)
0 件のコメント:
コメントを投稿