28日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「大手証券、投信手数料『残高連動』で試行錯誤~大和、売買多いと顧客有利に」という記事は「大手証券」に寄り添う内容だと感じた。前半部分を見てみよう。
柳川市から見た有明海※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
証券会社の投資信託販売で「残高連動」の手数料体系が広がってきた。大和証券は10月から連動型を新たに設け、野村証券も連動型の導入を検討している。もっとも、大和の場合は多く売買するほど顧客が有利になる仕組みで、一つの商品を長期保有すると不利になる場合もある。顧客本位の営業と、利益動向をにらみながらの試行錯誤が続いている。
大和は10月から、購入額が1000万円以上の場合に、購入時にその都度手数料を支払うか、残高に応じて年換算で最大約1%のフィーを支払う連動型にするかを選べるようにした。既に販売手数料が無料の商品などを除き、約360本を選んだ。12月以降に約30本を追加して原則として全ての投信が対象となる。
「相場環境にあわせ売買しながらふやしたい」なら残高連動型――。大和はウェブサイトで多く売買するほど有利になりやすいと解説している。連動型のコストは何回売買しても残高の約1%で、アクティブ型投信で一般的な2~2.5%程度の販売手数料がかからないためだ。
一般的な残高連動のイメージは、同じ商品を長期保有し、資産が膨らめば業者の収益も増えるというもの。大和も資産と収益が連動するのは同じだが、売買を前提としている点が目を引く。
◎「販売手数料」を実質的に取られるなら…
「連動型のコストは何回売買しても残高の約1%で、アクティブ型投信で一般的な2~2.5%程度の販売手数料がかからない」と言うが、これだと「販売手数料」の代わりに「連動型」の「手数料」を払うことになる。「既に販売手数料が無料の商品」が世の中にはたくさんあるのだから、「大手証券」の「残高連動型」を選ぶ合理性はゼロに近い。
「大手証券」が「試行錯誤」するのは勝手だが、日経には「投資家にとってメリットはない」と解説してほしかった。しかし、話は逆の方向に進んでいく。
【日経の記事】
野村証券は5月に残高連動型の手数料体系の導入検討を表明した。野村ホールディングスの奥田健太郎グループ最高経営責任者(CEO)は「(顧客と)同じベクトルを共有したい」という。ただし導入めどは2年で、慎重に制度設計しようという思惑がにじむ。
金融庁の森信親元長官が「顧客本位の営業」を求めてから、証券会社の手数料体系への注目は高まった。主要インターネット証券では投信の販売手数料はほぼ全面的に撤廃され、資産形成向けを掲げる新規参入組もおおむね無料だ。
対面営業型証券の歩みが遅く見えるのは、顧客層とも関連しているといえそうだ。相対的に売買頻度が高い顧客が多いのだとすれば、大和の新手数料が顧客の利益になるのは間違いない。大和は「当初は全体の投信手数料収入は減る可能性が高い」(古橋朋和営業企画部長)と予想する。
◎「顧客の利益になる」?
「相対的に売買頻度が高い顧客が多いのだとすれば、大和の新手数料が顧客の利益になるのは間違いない」というのは間違いではない。選択肢は多い方がいいだろう。だが「主要インターネット証券では投信の販売手数料はほぼ全面的に撤廃され」ているのだから「対面営業型証券」も追随して「撤廃」してくれた方が「顧客の利益になる」。なのに「大和の新手数料が顧客の利益になるのは間違いない」と書いてしまうところに「大手証券」寄りの姿勢を感じた。
※今回取り上げた記事「大手証券、投信手数料『残高連動』で試行錯誤~大和、売買多いと顧客有利に」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201028&ng=DGKKZO65515450X21C20A0EE9000
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