「東京とロンドンは、人口が増え、総人口の3割近くが首都圏に集中する状況は似ている」と日本経済新聞の斉藤徹弥論説委員が書いている。しかし、同じ日の朝刊1面の記事では「全人口に占める東京圏の人口の割合は29%(15年国連推計)。ニューヨーク(6%)やロンドン(13%)、上海(2%)など各国主要都市圏と比べても突出して高い」と別の筆者が書いており、矛盾している。斉藤論説委員の記事が間違っていると思えたので、以下の内容で問い合わせを送った。
大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 論説委員 斉藤徹弥様
16日の朝刊オピニオン面に載った「中外時評~菅氏が迫る地方の構造改革」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「東京とロンドンは、人口が増え、総人口の3割近くが首都圏に集中する状況は似ている。だが地方との関係では、コロナ禍で和らぐ傾向があるものの東京は転入超過が続いてきたのに対し、ロンドンは転出超過と正反対だ」との記述です。
同日朝刊1面の「働き手、地方めざす~テレワーク定着、東京圏が転出超」という記事で、松井基一記者と北爪匡記者は以下のように記しています。
「全人口に占める東京圏の人口の割合は29%(15年国連推計)。ニューヨーク(6%)やロンドン(13%)、上海(2%)など各国主要都市圏と比べても突出して高い」
「東京圏の人口の割合」は「29%」としているので、「3割近く」とした斉藤様と一致します。しかし「ロンドン」に関しては「13%」で「総人口の3割近くが首都圏に集中する状況」とは言えません。国土交通省が出している資料などのデータも1面の記事に近いので、斉藤様の記述が誤りではないかと見ています。
「東京とロンドンは、人口が増え、総人口の3割近くが首都圏に集中する状況は似ている」との記述は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
「東京は転入超過が続いてきた」との説明にも注文を付けておきます。1面の記事では「総務省の人口移動報告で7月、2013年に統計が現在の調査方法になってから初めての現象が起きた。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)からの転出者が転入を上回り、1459人の転出超過になった」と記しています。
「東京都の人口、7月は再び転出超」という8月29日付の日経の記事によれば、東京都に関しては「5月に続き7月も転出超過」です。「東京は転入超過が続いてきた」との説明は誤りとは言いませんが、誤解を招くものになっているのではありませんか。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアの一員として責任ある行動を心掛けてください。
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1面の記事の「全人口に占める東京圏の人口の割合は29%(15年国連推計)。ニューヨーク(6%)やロンドン(13%)、上海(2%)など各国主要都市圏と比べても突出して高い」という説明にも注文を付けておきたい。国土交通省の資料によると2017年時点でソウル都市圏(京畿道、仁川広域市を含む)の「人口の割合」は49.6%で「東京圏」をはるかに上回る。
「東京圏」を「突出して高い」と表現するためにソウルを比較対象から除いたのではないかとの疑いは残る。
※今回取り上げた記事「中外時評~菅氏が迫る地方の構造改革」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200916&ng=DGKKZO63869970V10C20A9TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。斉藤徹弥論説委員の評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。斉藤論説委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
土地が自然に返ると「国土縮小」? 日経 斉藤徹弥論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_9.html
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