大雨で増水した筑後川(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
伊藤忠商事は25日、ファミリーマートへのTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。ファミマ株の保有比率を50.1%から65.7%に引き上げた上で、同社を非上場化する。ファミマは新型コロナウイルスの影響などで苦戦している。親会社としての立場を強めた伊藤忠商事による、商品力の向上といった抜本的対策が急務だ。
24日までに7901万株の応募があり、下限としていた5011万株を上回った。伊藤忠は応募分をすべて買い付け、保有比率はファミマの自己株式などを除き65.7%となる。ファミマは10月下旬に臨時株主総会を開き、株式併合などの手続きを経た上で非上場となる見込みだ。
伊藤忠はかねて、ファミマや食品卸大手の日本アクセスをはじめとするグループ各社と連携し、商品在庫の圧縮や輸送コストの低減につなげる狙いを持っていた。ただ独立性が高いファミマとは温度差があった。同社のある幹部は「伊藤忠は管理能力に優れているかもしれないが、商品開発やマーケティングができるとは思えない」と話す。
ファミマの在庫や販売といった商品データのグループ内での共有は限られ、「グループ一体となった迅速な意思決定を推進できていない」との不満が伊藤忠で高まった。
ここに新型コロナによる来客の落ち込みが重なり、業況の悪化が鮮明になった。伊藤忠の幹部は「人工知能(AI)などを駆使し、売れ筋商品の開発や物流の効率化などを一体で進めることが再建の最善策」と話す。
海外では米アマゾン・ドット・コムなどがリアル店舗に進出し、データ分析やAIを使って売れ筋商品を投入する。伊藤忠にはこれら通販大手が将来的に商圏を侵食する強敵と映った。業績が振るわないファミマの危機感もあり、迅速な店舗改革にはTOBで伊藤忠の主導権を強めることが必要との認識で一致した。
ファミマ側の反応は複雑だ。九州地方の40代男性オーナーは「根本的な課題は消費者をひき付ける商品が少ないことだ」と話す。ファミマは「店舗再生本部」を立ち上げ、採算の悪い店舗を数百店規模で直営店にするといった収益性の向上策を進めてきた。沢田貴司社長は「伊藤忠を使い倒す」と語る。伊藤忠と手を携え、改革のスピードを加速できるかが焦点だ。
◎同意できているなら…
「ファミマ」側は「伊藤忠は管理能力に優れているかもしれないが、商品開発やマーケティングができるとは思えない」と考え、「伊藤忠」側は「グループ一体となった迅速な意思決定を推進できていない」と「不満」を抱いていたとしよう。
この場合、「伊藤忠」が支配力を高めようとするのは理解できる。ただ、「ファミマ株の保有比率を50.1%から65.7%に引き上げ」ても大した違いはない。過半の株を握っているのだから、「ファミマ」が言うことを聞かないなら「伊藤忠」は経営陣を入れ替えればいい。それは出資比率「50.1%」でもできる。「ファミマ」に好き勝手させないための「TOB」とは考えにくい。
そもそも「ファミマ」と「伊藤忠」に路線を巡る対立があるのだろうか。
「業績が振るわないファミマの危機感もあり、迅速な店舗改革にはTOBで伊藤忠の主導権を強めることが必要との認識で一致した」のであれば、両社に対立はない。「TOB」がなくても力を合わせて「迅速な店舗改革」を進められるはずだ。
「ファミマ」の「沢田貴司社長」も「伊藤忠を使い倒す」と発言しているのならば、そうすればいい。そこに「TOB」は必要ない。
結局「迅速な店舗改革にはTOBで伊藤忠の主導権を強めることが必要」という説明はかなり怪しい。「ファミマ」と「伊藤忠」はそう言っているのだろうが、それを鵜呑みにせず「TOB」の本当の狙いに迫ってほしかった。
※今回取り上げた記事「伊藤忠、ファミマのTOB成立~商品力の向上急務」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200826&ng=DGKKZO63046840V20C20A8TJ2000
※記事の評価はD(問題あり)。この問題に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経 藤本秀文記者の「ファミマTOB 気をもむ伊藤忠」に感じた疑問
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/08/tob.html
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