道路が冠水した福岡県久留米市内 ※写真と本文は無関係です |
記事の前半を見ていこう。
【日経の記事】
米レストラン予約サイト「オープンテーブル」のデータに流行の再燃がくっきりと映る。新型コロナの感染者が急増しているテキサス州やフロリダ州。7月半ば、飲食店の客数が前年の3~4割に落ち込んだ。一時は6割まで戻していたところから再び沈んだ。
この時期、米では1日の感染者が7万人を超えた。治療薬もワクチンも定まらない中での感染再拡大を前に消費者の動きが止まる。
米商務省がまとめている小売売上高は5月に前月比18.2%増、6月に7.5%増と上向いている。こんな政府統計ではつかみきれない直近の動向は、民間のオルタナティブ(代替)データが表している。携帯位置情報を分析したセーフグラフ社のデータによると、7月上旬にコロナ前の水準に戻っていたはずのウォルマートの来店客数は今、再び2割減に落ち込んだ。
感染拡大が落ち着くと消費が勢いづき、流行が再燃すると消費が沈む。世界共通の傾向だ。日本政府が緊急事態宣言を解除した後の6月、2人以上の世帯の消費支出は前年同月比1.2%減まで持ち直した。
感染者が再拡大した7月以降はどうか。ナウキャスト(東京・千代田)とJCBが指数化したJCBカードの購買データをみると7月前半はモノとサービスを合わせ前年同期比6.7%減。回復の流れが途切れた。
◎当たり前過ぎて…
「感染拡大が落ち着くと消費が勢いづき、流行が再燃すると消費が沈む。世界共通の傾向だ」--。それはそうでしょうねと言いたくなる。「新データで探る」と打ち出すならば、それを使ったからこそ見える傾向をあぶりだしてほしい。「携帯位置情報を分析したセーフグラフ社のデータ」は「新データ」なのかもしれない。だが、そこから読み取れるのが「感染拡大が落ち着くと消費が勢いづき、流行が再燃すると消費が沈む」といった話ならば、あまり意味はない。
見出しで使った「リベンジ預金」も引っかかった。
【日経の記事】
手厚い支援が消費を喚起するとは言い切れない。移動制限の緩和後に反動で支出が増える「リベンジ消費」になぞらえた「リベンジ預金」が中国で話題になっている。6月末の家計の預金残高は1年前より14%多い90兆元(約1350兆円)と過去最高。日米欧も若い世代を中心に所得を貯蓄に回す割合が一段と高まっていくかもしれない。先行き不安はなかなか拭えない。
◎どこが「リベンジ」?
まず、なぜ「リベンジ預金」なのかが分かりにくい。「預金がしたくてたまらなかったのにコロナのせいでできなかった。6月に入って感染が落ち着いてきたから、これまでの分まで預金してやるぞ」みたいなことなのか。だとしたら「先行き不安」とはちょっと違う。
しかも、なぜ「中国」なのかも分からない。「日米欧」に関しては「若い世代を中心に所得を貯蓄に回す割合が一段と高まっていくかもしれない」といった漠然とした話だけ。なぜ「日米欧」では「リベンジ預金」が「話題」にならないのか説明が欲しい。
最後に結論部分も見ておこう。
【日経の記事】
一方で、こんなデータもある。イスラエル発のスタートアップ企業シミラーウェブによると、世界で感染が再拡大した7月末、ネット通販のアマゾン・ドット・コムのサイト訪問数は前年同期比で2割増えた。買い物したかは不明だが、その入り口に来ているのは確かだ。料理宅配のウーバーイーツのサイト訪問数は2倍。「買いたい気持ち」が霧散したわけではない。
消費の形は社会の状況に応じて変わり、需要も浮き沈みする。コロナという危機がその変化を加速している。財政による需要喚起には限界がある。新たな政策の知恵も求められる。
◎これが結論?
「財政による需要喚起には限界がある。新たな政策の知恵も求められる」。これが記事の結論だ。それはそうでしょうねとは言えるが、今回の記事内容との関連は薄い。何を訴えたいかが明確にならないまま記事を作っていると、苦し紛れで当たり障りのない結びになってしまう。今回はその典型だ。
※今回取り上げた記事「コロナ下の経済 新データで探る(中) 感染再拡大、沈む消費 不安映す『リベンジ預金』」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200813&ng=DGKKZO62571680S0A810C2MM8000
※記事の評価はC(平均的)
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