2020年5月28日木曜日

日経 山本裕二記者の技術不足が見える「石油製品、鈍い需要回復」

28日の日本経済新聞朝刊マーケット商品面に載った「石油製品、鈍い需要回復~アジア市場年初比5割安 コロナで移動制限残り」という記事は完成度が低すぎる。筆者の山本裕二記者は記事を書くための基礎的技術を身に付けていないのだろう。
浮羽稲荷神社(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係

まず記事の前半を見ていく。

【日経の記事】

アジア市場で石油製品の需要の回復が鈍い。多くの国では新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための移動制限が残っていて、経済活動の復活に時間がかかっている。ガソリンや軽油などの価格は足元で年初比5割ほど安い。石油需要の約4割を占めるアジア地域で消費回復が遅れたままだと、石油会社の採算が悪化し、供給体制が弱体化しかねない。


アジア地域の指標となるシンガポール市場では石油製品価格が軒並み安い。ガソリン価格が1バレル35ドル前後、ガスオイル(軽油)が同38ドル、航空機燃料(ケロシン)が同37ドルとそれぞれ年初比で5割程度下落している。新型コロナの感染拡大に伴う移動制限で輸送燃料の需要が鈍い

石油天然ガス・金属鉱物資源機構の竹原美佳氏は「中国を除くアジア地域で石油需要が本格的に回復するのは10月からになるだろう」とみる。


◎肝心の情報が…

見出しで「石油製品、鈍い需要回復」と打ち出し、冒頭でも「アジア市場で石油製品の需要の回復が鈍い」と書いている。この場合、必ず入れるべき情報が2つある。(1)需要はどのくらい回復しているのか(2)なぜ「回復が鈍い」と言えるのか--。今回の記事には、いずれの情報も見当たらない。「新型コロナの感染拡大に伴う移動制限で輸送燃料の需要が鈍い」などと書いているだけで、そもそも「需要」に関する具体的なデータが出てこない。

石油製品価格」が「需要」に関するデータだと山本記者は考えているかもしれない。しかし、「価格」は基本的に需給で決まる。「価格」が上がっていても需要が「回復」していない場合はある。逆に「需要」の「回復」過程で「価格」が下がっても不思議ではない。供給面の影響があるからだ。この辺りは山本記者も分かっているとは思うが…。

記事の後半に気になる説明が出てくるので、それも見ておこう。

【日経の記事】

アジア市場の石油製品消費の回復はまだ先になりそうだ。国際エネルギー機関(IEA)が14日発表した月報によるとアジア地域では12月時点でも主要な製品需要の落ち込みが続く見通しだ



◎「回復」さえしてない?

需要の回復」は見られるものの、その勢いが「鈍い」のだと思って読み進めてきた。しかし、その前提が崩れるような記述だ。「アジア地域では12月時点でも主要な製品需要の落ち込みが続く見通し」だとすると、そもそも現状で「需要の回復」が見られるのか怪しくなってくる。

どの時点との比較かといった問題かもしれないが、「需要」が「回復」傾向にあるかどうかは明確に読者に示すべきだ。

今回の完成度で読者に記事を届けられるのは悪い意味で凄い。担当デスクと一緒にしっかり反省してほしい。


※今回取り上げた記事「石油製品、鈍い需要回復~アジア市場年初比5割安 コロナで移動制限残り
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200528&ng=DGKKZO59577640W0A520C2QM8000


※記事の評価はD(問題あり)。山本裕二記者への評価は暫定でDとする。

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