2020年5月23日土曜日

デフレスパイラルの心配要る? 日経「物価下落『来年前半まで』」

最近の日本経済新聞を読んでいると「新型コロナウイルスの影響でデフレに陥るのでは」と心配しすぎだと感じる。23日の朝刊総合4面に載った「物価下落『来年前半まで』~エコノミスト予測平均 耐久消費財・サービス低調」という記事の最後では以下のように記している。
浮羽稲荷神社(福岡県うきは市)
    ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

物価に下落圧力がかかっているのは各国も同じだ。国際通貨基金(IMF)は20年の先進国の上昇率は0.5%と、19年の1.4%から急速な鈍化を見込む。米国は4月のCPIが前月比でほぼ11年ぶりの低下幅だった。

物価が下がれば企業のもうけが減り、賃金は下がりやすい。賃金が減ったり失業が増えたりすると個人は消費を減らす。もうけがさらに減る企業は投資を抑え、景気は一段と冷える。大和総研の熊谷氏は「デフレスパイラルのリスクが出てきている」と懸念する。


◎「デフレスパイラルのリスク」?

デフレスパイラル」に明確な定義はないので、とりあえず「景気が悪化する局面において2年連続で物価下落率が10%以上になること」としておこう。「大和総研の熊谷氏」に比べれば経済に関する知識は乏しいと思うが、あえて大胆に予言したい。「新型コロナウイルスの影響で日本がデフレスパイラルに陥ることはない」

構造的に「デフレスパイラル」は起きにくいと見ている。今回、原油価格は歴史的な暴落となったが、それから1カ月近くが経っても近所のガソリンスタンドではガソリンが1リットル当たり110円台で売られている。年初と比べると10円程度下がったかなという程度だ。

デフレスパイラル」になればガソリンが80円、50円、30円、10円といった具合に安くなっていくはずだ。しかし税金部分だけで60円を超えるのに、そんなに下がるのか疑問だ。インフレで200円、300円と上がっていくのに比べれば、「デフレスパイラル」で価格が大幅に下がり続けるのは、そもそもハードルが高い。

しかも「国際通貨基金(IMF)は20年の先進国の上昇率は0.5%と、19年の1.4%から急速な鈍化を見込む」とも書いている。つまり「先進国」でさえプラス圏にとどまる。「デフレスパイラル」が現実化するためには「20年」に10%超の物価下落となる必要がある。しかし、そうした見通しにはなっていない。

そして新型コロナウイルス問題がインフレ要因となる点も無視できない。今回の記事でも以下のように書いている。

【日経の記事】

SMBC日興証券の宮前耕也氏は「家電製品の価格は新型コロナで二極化した」と指摘する。自炊が増え、電子レンジは26.8%、炊飯器は3.8%値上がりした。デスクトップ型パソコンが18.9%、プリンターが11.2%上昇したのは「在宅勤務向けの需要増が背景だ」(同)という。

マスクなども含めて需要増で値上がりする品目もあるが「総合的にみればコロナはデフレ圧力になる」(大和総研の熊谷亮丸氏)との声が多い。



◎両面あるなら…

総合的にみればコロナはデフレ圧力になる」としても、物価の上昇を促す面もあるのならば、一方的に物価が下がる「デフレスパイラル」を心配する必要性は低い。

どちらかと言えば怖いのはインフレだ。収入が減ったり途絶えたりした中で物価が上がれば生活の困窮に拍車がかかる。感染拡大で食料供給などに問題が生じて食品価格が上がってくれば社会不安も増大する。

日経がデフレ嫌いなのは勝手だが、分析は冷静にしてほしい。


※今回取り上げた記事「物価下落『来年前半まで』~エコノミスト予測平均 耐久消費財・サービス低調
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200523&ng=DGKKZO59466080S0A520C2EA4000

※記事の評価はC(平均的)

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