2020年2月4日火曜日

新型肺炎が「ブラックスワン」に? 日経 藤田和明編集委員の苦しい解説

ブラックスワン」は要注意の言葉だ。記事を手軽に彩れるが、大抵の場合は「マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象」(SMBC日興証券の用語集)とは言い難い。3日の日本経済新聞夕刊総合面に載った「市場が恐れる『黒い白鳥』~新型肺炎拡大 政策手段に限界」という記事にも、それは当てはまる。
亀山上皇銅像(福岡市)※写真と本文は無関係

筆者の藤田和明編集委員は以下のように書いている。

【日経の記事】

昨年5月に聞いた話は予言だったのだろうか。来日した米有力投資ファンド、カーライル・グループの創業者、デビッド・ルーベンスタイン氏に質問した。「いまの金融市場にとって、ブラックスワンは何でしょうか」。同氏の答えは、中東など世界各地での軍事衝突リスク、米国や日本の政府債務問題の2つに加えて、もうひとつあった。「ウイルスによる世界的な疫病の流行(パンデミック)だろう」

ブラックスワンとは「黒い白鳥」。かつてオーストラリアで黒い白鳥が発見され、白鳥は白だという常識が覆されたことが由来だ。従来の常識的な経験からは想定のできなかった事象が起き、それが衝撃となって大きな影響を人々に与えることをいう。


◎「まさか」がある?

中東など世界各地での軍事衝突リスク、米国や日本の政府債務問題」に「ウイルスによる世界的な疫病の流行(パンデミック)」--。どれも「事前にほとんど予想」できない事象とは思えない。「世界的な疫病の流行」はこれまで繰り返し起きているのに「ブラックスワン」と言えるのか。

例えば「日本、中国、韓国、北朝鮮が2020年に統一国家を作る」といった話ならば、確かに「ブラックスワン」だと思えるが…。

記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

新型肺炎は日を追って深刻さを増している。世界規模に広がるパンデミックとなれば、ルーベンスタイン氏の懸念が現実のものになってしまいかねない

米ムーディーズ・アナリティクスは「ほかに例のないブラックスワンになりうる」とのリポートを出した。08~09年の金融危機はまだ、米不動産市場の悪化が事前にわかっていた。今回は誰も予想してない事態だ。しかも金融危機への政策対応と異なり、健康にかかわる問題ゆえに政策手段は限られるとの指摘だ。



◎矛盾してない?

ルーベンスタイン氏の懸念が現実のものになってしまいかねない」状況なのに「今回は誰も予想してない事態」なのか。「ルーベンスタイン氏」は「世界的な疫病の流行」があり得ると「予想」していたのではないか。

今回の「新型肺炎」は本当に「従来の常識的な経験からは想定のできなかった事象」になりそうなのか。藤田編集委員も分かっているはずだ。

なのに記事の最後では「衝撃が大きく、人々の考え方にも影響するのがブラックスワン。だとすれば、この先のマネーの大きな方向性をも左右する問題になりうるとみておかなければならないだろう」と結んでいる。「新型肺炎」が「マネーの大きな方向性をも左右する問題になりうる」のは否定しない。しかし「ブラックスワン」かと言われたら明らかに違う。

従来の常識的な経験」から「想定」できていた「事象」だと断言できる。藤田編集委員は「世界的な疫病の流行」などもう起きないと確信していたのだろうか。



※今回取り上げた記事「市場が恐れる『黒い白鳥』~新型肺炎拡大 政策手段に限界
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200203&ng=DGKKZO55173190T00C20A2EAF000


※記事の評価はD(問題あり)。藤田和明編集委員への評価はDを維持する。藤田編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「FANG」は3社? 日経 藤田和明編集委員「一目均衡」の説明不足
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/fang.html

改善は見られるが…日経 藤田和明編集委員の「一目均衡」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_2.html

「中国株は日本の01年」に無理がある日経 藤田和明編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/01.html

「カラー取引」の説明不足に見える日経 藤田和明編集委員の限界
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_37.html

東証は「4市場」のみ? 日経 藤田和明編集委員「ニッキィの大疑問」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_28.html

合格点には遠い日経 藤田和明編集委員の「スクランブル」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_10.html

説明に無理がある日経 藤田和明編集委員「一目均衡~次世代に資本のバトンを」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_28.html

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