2020年1月22日水曜日

「ターゲット・デート・ファンド」を前向きに取り上げる日経に異議あり

21日の日本経済新聞夕刊1面に載った「投信の運用配分、年齢に応じて 若い時は株多く、徐々に債券シフト~残高1000億円超え」という記事は、金融業界に寄り添った筋の悪い内容だ。「ターゲット・デート・ファンド」を前向きに紹介しているのはあえてなのか。だとしたら読者への背信行為だ。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
          ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

年齢に応じて運用資産の配分を自動的に変える投資信託「ターゲット・デート・ファンド(TDF)」が人気だ。若い時は株を多く、その後は債券を増やして安定運用を目指す。企業型確定拠出年金(DC)での採用を中心に国内の残高は1月に入り初めて1000億円を超え、1年間で6割増えた。老後の資産づくりの手段として注目されている。

TDFは「2035年」「40年」など運用の目標年を定めており、投資家は引退する年に近い投信を選ぶ。例えば最大手の運用会社ブラックロックでは20代では株などリスクの高めな資産が6割を占めるが、30代から徐々に比率が下がり60代の退職時には2割となる。資産を国内外の株式や債券に分散する一般的な投信に比べ運用コストは高いが、運用担当者の判断で組み入れ銘柄を個別に入れ替える「アクティブ投信」より低い

投信評価会社の三菱アセット・ブレインズによるとDC向けが残高全体のうち940億円強を占める。ソニーやグンゼがDCの運用商品として選べるよう取り入れている。加入者が特に運用商品を選ばない場合に自動的にTDFで資金を運用する企業もある。

ブラックロックや野村アセットマネジメントなどでは、40~50代が定年退職までの運用を見越して買うケースが多い。「それまで資産運用に熱心ではなく、預金の比率が高い年齢層が資金を投じている」(ブラックロック・ジャパンの内藤豊・商品開発部長)という。

米国では180兆円規模の資産がTDFで運用されている。日本のDCに使える投信の残高は全体で13兆円にすぎず、TDFもまだその1%に満たない。19年に、老後資金が2000万円不足すると指摘した試算が話題になり、長期の資産形成につながる投信として関心を集めているようだ


◎なぜ前向きに紹介?

ターゲット・デート・ファンド」を記事で取り上げるなとは言わない。しかし今回のように前向きに取り上げるのは感心しない。「長期の資産形成につながる投信として関心を集めているようだ」などと書くと「だったらDCではTDFで運用してみようかな」と考える投資初心者が出てきそうで怖い。「絶対にやめろ!」と声を大にして言いたい。

まずコストに問題ありだ。「資産を国内外の株式や債券に分散する一般的な投信に比べ運用コストは高い」のならば、さっさと選択肢から外すべきだ。

最大手の運用会社ブラックロック」が手掛ける「LifePathファンド2035/2045/2055」の目論見書を見ると、購入時手数料が税込みで3.3%もかかる。ノーロードの投信も多い中で、投資のスタート段階から3%以上の元本を失ってもよいと考える人の気が知れない。

しかも、このファンドはスタート時で40%、最終的には80%を債券で運用するイメージだ。債券での運用部分にも信託報酬はかかってくる。現時点では非常に低い利回りしか期待できない債券運用で、さらに信託報酬を差し引かれたらどうなるか。「ターゲット・デート・ファンド」への投資を検討する場合、そこは考慮してほしい。

0.3%台の信託報酬は、債券部分の運用が多い点を考慮すると決して安くない。株式部分はETFでの運用が中心なので、その信託報酬も間接費用として掛かってくる。

結局、特にいいところはない。「ターゲット・デート・ファンド」と言われると「老後の資産づくりの手段」として良さそうな雰囲気は出る。しかし、あくまでイメージだ。

長期の資産形成につながる投信」などと勘違いして投資対象にしないよう心掛けたい。


※今回取り上げた記事「投信の運用配分、年齢に応じて 若い時は株多く、徐々に債券シフト~残高1000億円超え
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200121&ng=DGKKZO54632860R20C20A1MM0000


※記事の評価はD(問題あり)

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