能古港(福岡市)※写真と本文は無関係です |
まず「日米安保60年の絆を形骸化させるな」という社説を見ていこう。「日本と米国がいまの安全保障条約を結んで60年の節目を迎えた」ことを受けて以下のように訴えている。
【日経の社説】
自民党には「日米同盟によって中国を力で押し返す」といった勇ましい声をあげる向きもあるようだ。それが本当に民意なのか。米軍だって日中の無用な紛争に巻き込まれたくはないだろう。
トランプ米大統領は在日米軍の撤退をほのめかしてきた。日本ではいわゆる思いやり予算の増額を引き出すためのブラフと軽視されがちだが、他国の安保まで面倒見切れないと考える米国民が増えているのは事実だ。ポスト・トランプ政権でも傾向は変わるまい。
大事なのは、日米が等しく利益を得られる同盟に育てていくことだ。寄りかかりすぎず、遠ざけもせず。還暦の同盟を形骸化させてはならない。
◎抽象的過ぎて…
「還暦の同盟を形骸化させてはならない」という主張が抽象的過ぎる。「形骸化」の傾向が見られるのか。それをどうやって測るのか。社説からは判断できない。
「大事なのは、日米が等しく利益を得られる同盟に育てていくことだ」とも書いている。これまで「日米」どちらの「利益」が大きかったのか。それをどうやって測るのか。やはり何も手掛かりがない。
「寄りかかりすぎず、遠ざけもせず」も具体性に欠ける。結局、ぼんやりした話のままだ。これを読者に届ける意味はあるのか。
次は「見通せない原発の運転計画」という社説を見ていく。「四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを認めた広島高裁の判断」を受けたものだ。
【日経の社説】
広島高裁は、規制委が示した活断層と火山の影響評価の両方に問題があるとした。火山に関しては阿蘇山の大規模噴火で降り注ぐ火山灰などの量の想定が小さすぎ、規制委の判断は不合理だとした。
火山の影響をめぐっては、17年の運転差し止めの際、高裁が規制委の指針の不備を指摘して指針見直しにつながった。さらに改善すべき点がないかを、規制委は絶えず点検する必要がある。
広島高裁の判断は、他の原発訴訟の行方にも影響する可能性がある。国のエネルギー基本計画は、原発を重要な基幹電源と位置づけている。しかし運転計画が定まらない原発が増えれば、エネルギー政策が行き詰まりかねない。
電力会社は審査基準を満たすのはもちろん、住民らとの意思疎通をよくして信頼獲得へ全力をあげるべきだ。規制委も司法判断を謙虚に受け止め、原発の安全性向上へ一層努力してほしい。
◎なぜ立場を鮮明にしない?
社説で取り上げるならば「広島高裁の判断」を支持するかどうかは絶対に入れたい。この部分は支持するが、この部分は不支持といった形でもいい。とにかく日経としての主張を明確に打ち出すべきだ。そのための社説ではないのか。
しかし今回の社説では、そこを曖昧にして逃げている。「広島高裁の判断」を支持したくはないが、否定できる材料も持っていないのだろう。だから逃げたのならば、社説のテーマに取り上げないでほしい。
「広島高裁の判断」を否定しないまま「しかし運転計画が定まらない原発が増えれば、エネルギー政策が行き詰まりかねない」と困った感じは見せている。
それで結論が「電力会社は審査基準を満たすのはもちろん、住民らとの意思疎通をよくして信頼獲得へ全力をあげるべきだ。規制委も司法判断を謙虚に受け止め、原発の安全性向上へ一層努力してほしい」では…。
改めて言うまでもない当たり前のことを書いているだけだ。こんな当たり障りのない主張を読者に届けて心が痛まないのならば、その論説委員は書き手としての引退を考えるべきだ。
やはり、日経の社説は廃止が望ましい。
※今回取り上げた社説
「日米安保60年の絆を形骸化させるな」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200119&ng=DGKKZO54574170Y0A110C2EA1000
「見通せない原発の運転計画」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200119&ng=DGKKZO54574070Y0A110C2EA1000
※社説の評価はいずれもD(問題あり)
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