のこのしまアイランドパークの「思い出や」(福岡市) ※写真と本文は無関係です |
記事を見ながら指摘していく。
【日経の記事】
マイナス金利が続いている。2020年の金融政策見通しを考えるとき、マイナス金利が終わる可能性は相当低いと見るべきだろう。これからの高齢化と貯蓄率上昇を踏まえると、30年にかけても金利は低位で推移すると想定される。これが金融市場の岩盤のような役割を果たすことはほぼ間違いない。
こうした状況を背景に、金融市場では債務が積み上がっている。構造的な低成長、低金利が中期的に続くなかでは、コストの安い負債は有利な資金調達手段で、債務が膨張したのは当然の帰結だ。しかも、投資家がリターン確保を意図したことから、19年現在、シングルAからトリプルAまでの高格付け債務の発行残高が2兆ドルを少し割るのに対し、トリプルBの債務残高は2.8兆ドル超にのぼる。さらに低格付けのハイイールド債、低格付け企業向けの融資であるレバレッジドローンの残高は合わせて2.4兆ドル強となっている。リスクのある債務の残高が増えていることを理解しておく必要がある。
◎数字の見せ方が…
「リスクのある債務の残高が増えていることを理解しておく必要がある」と言いながら、「リスクのある債務の残高」がどのくらい増えているのか書いていない。「19年現在」の「残高」を見せているだけだ。これは辛い。
「シングルAからトリプルAまでの高格付け債務の発行残高が2兆ドルを少し割るのに対し、トリプルBの債務残高は2.8兆ドル超にのぼる」と言われても、ほとんどの人はこれが異常なのかそうでないのか判断できない。数字の見せ方が下手すぎる。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
そうなると共通の問いは「いつ」「何を理由に」バブル的様相が崩壊するのか、である。正確な答えの用意などあるはずもないが、無理を重ねた市場にひずみが出ることは歴史が証明している。
では、いつなのか。債務残高が膨張しても流動性が回る限りデフォルトはしない。投資家にとって、米国企業債務も中国債務もレバレッジドローンも投資対象であり続け、償還されることになる。現時点でレバレッジドローンの償還のピークは24年、中国社債は21年である。そう考えれば、少なくとも20年中に問題が起きることはないだろう。
◎「流動性が回る」?
経済記事を人並み以上に読んできたつもりだが「流動性が回る」という表現には初めて接した。そもそも「流動性」は「回る」ものなのか。
「高い流動性を維持できている限りデフォルトはしない」との趣旨だと仮定して考えてみよう。この場合、「ハイイールド債」といった金融商品の「流動性」について言っていると理解したくなる。しかし金融商品の「流動性」がいくら高くても、企業の返済能力が落ちていけば「デフォルト」は起きる。
なので「企業が必要な資金を調達できている限りデフォルトはしない」と言いたいのかなとも考えてみた。これだと筋は通るが「流動性が回る限りデフォルトはしない」をかなり拡大解釈している感じはある。
さらに引っかかるのが「現時点でレバレッジドローンの償還のピークは24年、中国社債は21年である。そう考えれば、少なくとも20年中に問題が起きることはないだろう」という解説だ。「償還のピーク」を迎えない限り「問題が起きることはないだろう」と見ているようだ。
これはよく分からない。「償還のピーク」でなくても市場に大きなインパクトを与える「デフォルト」は起き得る。それが市場の混乱を招いても不思議ではない。しかも「中国社債は21年」に「償還のピーク」を迎える。「償還のピーク」が危険な時期ならば、その前年の「20年中」もそこそこ危ないのではないか。
記事を読む側としては「中空氏にまともな分析を期待するな」と思っておくべきだろう。
※今回取り上げた記事「エコノミスト360°視点~債券バブルに崩壊の足音?」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200117&ng=DGKKZO54465740W0A110C2TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。中空麻奈氏への評価はDで確定とする。中空氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
BNPパリバの中空麻奈氏に任せて大丈夫? 東洋経済「マネー潮流」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/bnp.html
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