のこのしまアイランドパーク(福岡市) ※写真と本文は無関係です |
当該部分を見ていこう。
【ダイヤモンドの記事】
創業者の人物にほれ込み、即断即決で出資を決めることは、まさに「孫流」の投資スタイルである。1996年、米国でジェリー・ヤン氏とデイビッド・ファイロ氏に会い、創業間もなく社員も5~6人しかいない小さな会社に100億円をぽんと出資した。米ヤフーであり、今の日本のヤフーにつながっている。
2000年には中国で、ジャック・マー氏が創業したアリババグループに20億円の出資を即断。マー氏は技術者でも何でもない、単なる英語教師だったが、アリババはインターネット通販で大成功し、モバイル決済サービスのアリペイも中国全土に普及させた。ショッピングから金融まで、中国人の生活に密着した幅広いサービスを提供し、ユーザーを囲い込む勝者総取りの強いビジネスモデルを構築した。
これと思った経営者に驚くほどの巨額を投じ、その市場の需要を総取りするガリバー企業を生み出す孫氏の手法は、インターネットサービスの本質を見事に捉えていた。ネットサービスでは、ユーザーが増えれば増えるほどそのサービスの価値が高まる。いわゆる「ネットワーク効果」だ。当初はもうからなくても、さらには相当の期間にわたり赤字を垂れ流しても、規模さえ取れれば最後には勝てるというパワーゲームだ。
◎アリババが「総取り」?
記事からは「アリババ」が「ユーザーを囲い込む勝者総取りの強いビジネスモデルを構築した」と取れる。しかし「大成功」した「インターネット通販」で中国市場に限っても5割強のシェアしかないようだ。であれば「総取り」には程遠い。「中国の小売市場」「世界のネット通販市場」といった括りでは「勝者総取り」からさらに遠くなる。
「米ヤフー」や「今の日本のヤフー」が「勝者総取り」を実現させたかどうかは語るまでもない。
「ネットワーク効果」が働くので「ネットサービス」では「需要を総取りするガリバー企業」が生まれやすいとは、よく聞く話ではある。しかし実際にそうなっている事例はあまり見当たらない(自分が知らないだけかもしれないが…)。
付け加えると「規模さえ取れれば最後には勝てるというパワーゲーム」という説明も引っかかった。
ここで言う「パワーゲーム」とは「体力勝負」に近い意味だろう。だが、本来は「大きな力を持つ国や権力者間の主導権争い」(大辞林)を指す。間違った使い方とは言わないが、「規模さえ取れれば最後には勝てるという体力任せの勝負」などとした方がしっくり来る。
「勝者総取り」に関しては他にも気になる記述があった。
【ダイヤモンドの記事】
国民的人気を誇るヤフーは、LINEとの統合で1億人を超えるユーザー基盤を確保し、国内のネット市場の覇権を握る(①)。まさに孫氏の「勝者総取り」の思想を体現するパワーゲームだ。
◎「覇権」を握れないような…
まず「ヤフーは、LINEとの統合で1億人を超えるユーザー基盤を確保し、国内のネット市場の覇権を握る」との説明が苦しい。「①」のグラフを見ると「インターネットサービスの平均月間利用者数」で1位ヤフー、2位グーグル、3位ユーチューブ、4位LINEとなっている。
グラフを見る限り「ヤフーは、LINEとの統合で1億人を超えるユーザー基盤を確保」できるのは確かだ。しかし、グーグルとユーチューブもアルファベット傘下なので、まとめて見る必要がある。そうすると「ヤフー・LINE」連合は「利用者数」で負けている。なのに「国内のネット市場の覇権を握る」と言えるのか。
「利用者数」以外の要素も考慮すれば「覇権を握る」のかもしれないが、記事中にそうした説明はない。
そして「勝者総取り」の問題だ。「ヤフー・LINE」連合は「『勝者総取り』の思想を体現するパワーゲーム」を仕掛けて、グーグル、フェイスブック、楽天などを国内市場から締め出す存在となり得るのか。その可能性は限りなくゼロに近い気がする。
※今回取り上げた特集「孫正義、大失敗の先」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/28243
※特集全体の評価はC(平均的)。杉本りうこ副編集長の評価はB(優れている)を維持する。村井令二記者への評価はD(問題あり)からCに引き上げる。杉本副編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「TSUTAYA特集」に見えた東洋経済 杉本りうこ記者の迫力
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_27.html
「2.5次元」で趣味が高じた東洋経済「熱狂!アニメ経済圏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/25.html
文句の付けようがない東洋経済の特集「ネット広告の闇」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_19.html
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