2019年11月21日木曜日

日経「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃」に感じる怪しさ

21日の日本経済新聞朝刊 金融経済面に載った「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃~来月から 助言手数料新設へ 長期投資促す」という記事は怪しい臭いがする。「長期投資促す」などと日経は持ち上げているが、投資家にとっては筋の悪い話だと考える方が自然だ。
のこのしまアイランドパーク(福岡市)
           ※写真と本文は無関係です

記事を見ながら疑問点を述べてみたい。

【日経の記事】

外資系のフィデリティ証券は投資信託を販売する際の手数料を12月から撤廃する。取り扱う45の運用会社による656の投信すべてが対象。販売手数料を収益源としていると、顧客に不要な売買を促すインセンティブが働き、長期投資を阻害するとの指摘がある。フィデリティは将来的に「運用助言手数料」を新たに設け、手数料の面からも長期投資を促す体制に切り替えていく

投信の販売手数料は商品性の説明などの手間に対する対価との位置づけ。対面での営業をしないネット証券では同手数料がゼロの「ノーロード」型投信が増えてはいる。ただ、一時的なキャンペーンなどではなく、販売手数料を恒久的・全面的に無料にするのは主要ネット証券でも例がない

フィデリティではインターネットで取引し、運用報告書などを電子交付にすることを条件に全投信の販売手数料を無料にする。公的年金だけでは豊かな老後が送れないとされた「2000万円問題」をきっかけに、若年層などでは資産運用に対する関心が高まっており、今回の判断を受けて他の金融機関から顧客が大きく動く可能性もある


◎随分と好意的だが…

手数料の面からも長期投資を促す体制に切り替えていく」「販売手数料を恒久的・全面的に無料にするのは主要ネット証券でも例がない」「今回の判断を受けて他の金融機関から顧客が大きく動く可能性もある」--。ものすごく革新的で素晴らしい判断を「フィデリティ証券」がしたような書き方だ。実際にそうならば問題はない。だが、記事を読み進めると徐々に怪しくなってくる。

【日経の記事】

運用手数料にあたる「信託報酬」も現金を含む資産残高が3000万円超なら割り引く。これに該当する顧客に対しては、専門チームが投資相談に応じる新しいサービスも立ち上げる。

その一方で、投資や運用のアドバイスの対価として「運用助言手数料」を新たに得るようにし、中長期的には収益の柱に育てる方針。金融庁の認可を得て、早ければ来年中にも「投資助言代理業」の登録をめざす。

一人ひとりの顧客に対応するには大量の担当者が必要になるが、現在フィデリティグループが米国や欧州で提供しているロボットアドバイザー機能を国内にも持ち込み、コストは最小限に抑えることを検討する。

助言手数料の詳細は今後詰めるが、信託報酬と同様、顧客が投信を保有している間、資産残高に応じた額を受け取るのが一般的。このため、「長期でどう資産を増やしていくか」という顧客目線に沿ったインセンティブが運用会社にも働きやすくなる効果がある。


◎結局、微妙では?

結局、「販売手数料」を廃止する代わりに「助言手数料」を導入するという話だ。例えば、これまでは「販売手数料」が購入時2%、今後は代わりに「助言手数料」が毎年0.001%となるのならば投資家としては歓迎できる。しかし「助言手数料の詳細は今後詰める」ので、投資家にとって歓迎すべき話なのかどうかは判断できない。

『信託報酬』も現金を含む資産残高が3000万円超なら割り引く」とも書いているが、これもどの程度を「割り引く」のか触れていない。

助言手数料の詳細」も含めて具体的な手数料率が出てこないのは、大したことのない話だとバレるのが嫌だからではないかと勘繰りたくなる。

さらに記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

顧客が売買する度に生じる販売手数料を撤廃すれば、長期的な運用パフォーマンスの低下につながりやすい「頻繁な乗り換え」を促す動機もなくなる。この結果、フィデリティの手数料体系は「長期投資」と相性がよくなり、ビジネスモデルは独立系アドバイザー(IFA)が中核を担う米国や英国の個人向け金融に近づく。


◎手数料率次第では?

フィデリティの手数料体系」が「『長期投資』と相性がよく」なるかどうかは手数料率次第だ。「販売手数料を撤廃」したとしても「信託報酬」と「助言手数料」を合わせて年1%、2%と取るのならば「長期投資」であれ短期投資であれ投資家は「フィデリティ」と関わるべきではない。

今回の記事は日経の記者が「フィデリティ」の宣伝戦略に上手く取り込まれてしまった印象が強い。


※今回取り上げた記事「フィデリティ証券、投信販売手数料を撤廃 来月から~助言手数料新設へ 長期投資促す
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191121&ng=DGKKZO52412520Q9A121C1EE9000


※記事の評価はD(問題あり)

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