のこのしまアイランドパーク(福岡市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
音楽のライブやコンサートが活況です。ぴあ総研によると、2018年の動員数は5043万人と5年間で39%増えました。ライブ人気は米国でも目立ち、音楽配信の技術の進歩とも関係しているようです。データと共に背景を考えてみます。
コンサートプロモーターズ協会の公開データによると、国内の入場者数が過去30年で最少だったのは1997年の1300万人でした。その後10年ごとの伸び率は2007年までが61%、07年から17年にかけては128%増えました。ライブ人気はこの10年ほどが顕著です。
「音楽を誰もが無料で聴けるようになった影響が大きい」と話すのは音楽産業を研究する関西大学の高増明副学長です。かつてはレコードやCDにお金を払っていましたが、今はインターネットに接続していれば無料で音楽を聴けます。
消費者には都合のいい現象ですが、音楽で生計を立てていた人は困ります。CDなど音楽ソフトの生産額は98年の6074億円から18年に2403億円と半分以下に落ち込みました。一方、ライブは入場者からお金をとることができるためミュージシャンには貴重な存在です。国内の公演数は過去10年で2倍に増えました。
◎供給者側の都合だけ?
「CDなど音楽ソフト」が売れなくなり、「音楽で生計を立てていた人」が困って「公演数」を増やしたから「音楽のライブやコンサートが活況」になったと筆者の高橋元気記者は見ているのだろう。
違うとは言わないが、あくまで供給側の事情だ。「公演数」を増やしても、見に来てくれる人が増えなければ市場は拡大しない。需要側の分析がないのが残念だ。
付け加えると「かつてはレコードやCDにお金を払っていました」と書くと「今は『レコードやCDにお金を払って』いる人はいない」と取れる。言うまでもないが、今でも「レコードやCDにお金を払っている人」は当たり前にいる。自分もその1人だ。
また「今はインターネットに接続していれば無料で音楽を聴けます」と高橋記者は言うが、ネットが普及する前から「無料で音楽を聴け」る環境はあった。例えばラジオだ。
「インターネットに接続」するには定期的にお金を払う必要があるので、「無料で音楽を聴けます」と言い切ってよいか微妙。一方、ラジオは受信装置さえあれば完全に無料だ。好きな曲をカセットテープに録音して繰り返し聴くこともできる。高橋記者には経験がないかもしれないが…。
記事の続きを見ていこう。
【日経の記事】
"稼ぎ頭"となったライブのチケットは値上がりしているようです。コンサートプロモーターズ協会のデータから入場者1人あたりの売上額をはじくと過去20年で4965円から7091円に上がりました。43%の上昇率はこの間の物価上昇率(約1%)を大きく上回ります。業界動向に詳しい楽天証券経済研究所チーフアナリストの今中能夫氏は「照明など演出コストの上昇に加え、利幅を厚くしたい開催側の思惑があるようだ」と背景を分析しています。
◎だったらなおさら…
上記のくだりに限れば問題は感じないが「利幅を厚くしたい開催側の思惑」で「チケットは値上がり」しているとすれば、「音楽のライブやコンサートが活況」になった要因として需要の盛り上がりがなおさら重要になってくる。供給側の事情だけで「公演数」を増やしている場合、「利幅を厚く」するのは困難なはずだ。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
チケット価格の上昇は米国でも目立ちます。米経済学者の故アラン・クルーガー氏は19年に出版した著書で、米国の平均チケット単価が81年から18年にかけて5倍超に値上がりしたと記しています。同氏は背景に「一部のミュージシャンへの人気の集中」があると見ています。高額なチケットを売りさばけるスターに観客が集中した結果、トップ1%のミュージシャンの収入シェアは82年の26%から現在は60%まで上昇したそうです。
◎逆になりそうな…
「一部のミュージシャンへの人気の集中」によって「米国の平均チケット単価」が大幅に上昇したとの分析が腑に落ちない。「平均チケット単価」が単純平均だとすると、逆になりそうな気もする。高値でさばけるのは「トップ1%」だけで、残りは人気が落ちていると仮定しよう。人気に連動して「チケット価格」が動くのならば「平均チケット単価」は下がる可能性の方が高そうだ。「平均チケット単価」が大きく上がる場合は「トップ1%」が驚くほどの上昇を見せる必要があるだろう。
ついでに言うと「平均チケット単価が81年から18年にかけて5倍超に値上がりした」と書くと「単価が値上がり」となるのでダブり感が出る。「平均チケット単価が81年から18年にかけて5倍超になった」などとすべきだ。
※今回取り上げた記事「デンシバSpotlight~音楽ライブが急増・高額化 CDに代わる『稼ぎ頭』に」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191111&ng=DGKKZO51847830W9A101C1EAC000
※記事の評価はD(問題あり)。高橋元気記者への評価も暫定でDとする。
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