2019年11月14日木曜日

「短時間労働者の増加で1時間当たり労働生産性が低下」と日経は言うが…

「短時間労働者が増えたために1時間当たりの労働生産性が落ちた」と言われて納得できるだろうか。「1人当たり」ならば分かる。1人で8時間に100個作っていたのを、2人で4時間ずつで合計100個作る体制に切り替えたら「1人当たりの労働生産性」は半分になり、「1時間当たり」に変化はない。
のこのしまアイランドパークのコスモス
       ※写真と本文は無関係です

しかし日本経済新聞の記事では「短時間労働者の就労を増やしたことが、(1時間あたり)労働生産性を押し下げた」と言い切っている。日経には以下の内容で問い合わせしてみた。


【日経への問い合わせ】

14日の日本経済新聞朝刊経済面に載った「労働生産性、7年ぶり低下~短時間労働者増で」という記事についてお尋ねします。最初の段落に以下の説明があります。

日本生産性本部は13日、日本の名目労働生産性が2018年度に1時間あたり4853円と、前年度を0.2%下回ったと発表した。低下は7年ぶり。人手不足感が強いサービス業が高齢者や女性ら短時間労働者の就労を増やしたことが、労働生産性を押し下げた

これを信じれば「サービス業が高齢者や女性ら短時間労働者の就労を増やした」ために「1時間あたり」で見た「名目労働生産性」が「7年ぶり」に「低下」したはずです。

短時間労働者の就労」が増えて「1人当たり」の「労働生産性」が「低下」するのは分かりますが、記事では「1時間あたり」の「低下」要因として扱っています。

日本生産性本部」がそうした説明をしているのか発表資料に当たってみました。その中には以下の記述があります。

2018年度の労働生産性が落ち込んだのは、人手不足に対する懸念から企業が雇用に積極的だったことが大きい。2018年度の就業者数は前年度から115万人増加した。女性の増加(74万人)が全体の増加幅の2/3を占めたほか、高齢者だけでなく45歳以上の就業者の増加が目立った。こうした増加幅が、経済成長率を上回るペースになったことが生産性の低下となって表れた

確かに「高齢者や女性」に触れていますが、これはやはり「日本の名目労働生産性(就業者1人当たり付加価値額)」に関する説明です。「就業1時間当たり」については、また別の分析となっています。

1時間あたり」の「労働生産性」が「低下」した原因を「短時間労働者の就労」に求めるのは誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界最強のビジネスメディア」であろうとする新聞社として責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


短時間労働者」は総じて「就業1時間当たり」の「労働生産性」が低いとの前提があるのならば日経の説明も成立するが、記事中にそうした記述は見当たらない。


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「労働生産性、7年ぶり低下~短時間労働者増で
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191114&ng=DGKKZO52122810T11C19A1EE8000


※記事の評価はD(問題あり)

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