2019年10月7日月曜日

どうなったら「勧告に向き合う総務省」と言える? 日経社説への疑問

7日の日本経済新聞朝刊総合・政治面に「勧告に向き合わない総務省」という社説が載っている。見出しから判断すると「総務省」に「勧告」と向き合うよう求める内容だと思ってしまう。しかし社説を読んでみると、具体的にどうすれば「勧告」と向き合うことになるのかよく分からない。
金華山黄金山神社(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係

社説の全文を見た上で、この問題を考えてみたい。

【日経の社説】

地方自治に則した対応を求める勧告に誠実に向き合ったとは言えない。ふるさと納税をめぐり、総務省は国地方係争処理委員会が不適切とした指摘を受け入れず、法廷闘争も辞さない判断を下した。

自治体の駆け込み寺とされる第三者機関をないがしろにするかのような姿勢である。自治の理念より、国の役所としてのメンツを優先したと言わざるをえない。

ふるさと納税制度から外された大阪府泉佐野市の訴えを受け、係争委は除外の根拠が不適切だとして再検討するよう勧告していた。総務省は再検討の結果、除外を維持するとの結論を出した

よその自治体への影響を顧みない泉佐野市の手法は是正が必要だとは係争委も認めていた。その意味で改めて除外としたのはやむを得ない面がある問題は係争委が不適切だとした除外の根拠に関する見解が食い違っていることだ

係争委は、過去に返礼品ルールに違反した事実を、将来にわたって除外の要件とするのは、裁量の範囲を超える恐れがあるとした。総務省は法律で裁量は幅広く認められており、妥当だとした。裁判になれば一つの争点になろう。

法改正前の返礼品ルールは自治体が従う義務のない技術的助言で、地方自治法は助言に従わないのを理由に国が自治体に不利益な扱いをするのを禁じている。係争委は、返礼品ルールに従わないから除外するというのは、この規定に触れかねないとしていた。

総務省は今回、法律の根拠があれば助言に従わない自治体の不利益になってもよいとの見解を示した。国と自治体を対等な関係とする基本原則にかかわる部分で、国に強い権限を認めた印象だ。

係争委を軽んじる姿勢も、不利益な扱いを容認する解釈も、地方分権が形骸化していることを総務省が自ら示したようなものだ。司法の場で決着するまでは変えられないということかもしれないが、これでは他の省庁が自治体への統制を強めても、自治体側に立つべき総務省は文句を言えまい。



◎「除外を維持」との両立が…

係争委は除外の根拠が不適切だとして再検討するよう勧告していた」。そして「総務省は再検討の結果、除外を維持するとの結論を出した」。「勧告」通りに「再検討」したのだから「向き合った」とも言えるが、社説では「勧告に誠実に向き合ったとは言えない」と言い切っている。これはこれでいい。

除外」を見直さないと「勧告に誠実に向き合ったとは言えない」との見方も成り立つ。しかし「よその自治体への影響を顧みない泉佐野市の手法は是正が必要だとは係争委も認めていた。その意味で改めて除外としたのはやむを得ない面がある」と社説では「除外」に理解を示している。

となると「除外を維持」したまま「勧告に誠実に向き合」う道があるのだろう。しかし、社説を最後まで読んでも、どう対応すれば「勧告に誠実に向き合った」と言えるようになるのか不明だ。

問題は係争委が不適切だとした除外の根拠に関する見解が食い違っていることだ」と書いているので、ここがポイントになりそうな気はする。しかし「係争委は、過去に返礼品ルールに違反した事実を、将来にわたって除外の要件とするのは、裁量の範囲を超える恐れがあるとした」のだから、「勧告」と「誠実に向き合」うために「係争委」の見解を採り入れると「除外を維持」する根拠が危うくなる。

今回の社説で主張の大枠を維持したまま整合性の問題を解消するには「『除外』の決定を見直せ」と訴えるしかないような…。


※今回取り上げた社説「勧告に向き合わない総務省
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191007&ng=DGKKZO50658020V01C19A0PE8000


※社説の評価はD(問題あり)

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