2019年8月22日木曜日

藤井一明 経済部長は金融業界のカモ? 日経「Deep Insight」に感じる不安

日本経済新聞の藤井一明経済部長が優れた書き手でないことは以前に述べた。22日の朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~金融砂漠を潤す実験」という記事を読むと、金融業界の回し者だとも確認できる。回し者というより、藤井部長自身が金融業界にとってカモなのかもしれない。
金華山黄金山神社(宮城県石巻市)
       ※写真と本文は無関係です

記事の後半部分で藤井部長は以下のように書いている。

【日経の記事】 

6月末に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の宣言は高齢化と金融を結びつけるための「G20福岡ポリシー・プライオリティ」を承認事項として盛り込んだ。G20と経済協力開発機構(OECD)などが検討してきた行動計画で、長生きがリスクにならないよう金融面で備えるべき8項目の提言からなる。

米中対立の影で大きく報じられなかった8項目は日本の未来にとって貴重な指針を含む。以下、特に重要と考える4つを挙げる。カッコ書きは筆者が付け加えた。

▼高齢者を(詐欺や不適切な金融取引から)守ろう

▼データとエビデンス(裏付けとなる証拠)を活用しよう

▼デジタルと金融リテラシー(知識)を強化しよう

▼カスタマイズしよう(個々人の多様なニーズに合わせた商品やサービスを開発しよう)

麻生氏の地元である「福岡」の名前をつけたのは、大阪での首脳会議の前に福岡で開かれた財務相・中央銀行総裁会議に向けて検討してきたからだ。データやエビデンスになりうる「老後2千万円」の報告の核心は、参院選を控えて公表した間の悪さではなく、高齢化の課題先進国である日本からの重要な問題提起のはずだった。

金融界は動き出している。三井住友信託銀行は優先8項目に沿った具体的な対策を公表した。個人営業を担う部長らに「老年学」と呼ばれる検定試験の合格を義務付けるとともに全店に「認知症の人にやさしい金融ガイド」を配り、研修を重ねる。「繰り返しやつじつまの合わないことを言われても否定しない」「沈黙を恐れない」「紛失物を先に発見しない」など実践的な内容が並ぶ。

三井住友フィナンシャルグループは資産運用や相続のような従来の「金融ニーズ」と社会貢献や生きがいなど「非金融ニーズ」を組み合わせ、個人ごとのマネープランにとどまらないライフプランを描く姿を展望する。問われるのはカスタマイズの巧拙だ。

利用者の目線から、フィデリティ退職・投資教育研究所長の野尻哲史氏は退職時に政府が無料で投資の相談に応じている英国が参考になると提案する。若いうちからの投資教育も大切だが、「お金に最も真剣に向き合うのは退職時」と指摘する。

そのうえで日本では政府よりも企業が開く「退職セミナー」などに金融機関が協力するのが現実的だとみる。年金や借入金、不動産の運用なども含めてワンストップで解決策を示せる体制を築ければ確かに便利だろう

「老後2千万円」の報告を検討した金融庁の部会には様々な業態の金融機関だけでなく、消費者庁や厚生労働省、日銀などもオブザーバーに名を連ねた。有識者の委員からたびたび出た意見は「目線を合わせましょう」だった。

行政や業界の縦割りを崩す千載一遇の機会を逃したと思えてくるが、今からでも遅くはない。放置すれば砂漠のような環境に置かれる高齢者と将来の高齢者を金融の知識やサービスで潤すべきだ。そこにイノベーションや規制改革、業界再編の芽も潜む。マイナス金利や現代貨幣理論(MMT)よりも有益な実験になるはずだ。


◎なぜ日本では「金融機関が協力するのが現実的」?

最も引っかかるのは「退職セミナー」のくだりだ。

フィデリティ退職・投資教育研究所長の野尻哲史氏は退職時に政府が無料で投資の相談に応じている英国が参考になると提案する」「そのうえで日本では政府よりも企業が開く『退職セミナー』などに金融機関が協力するのが現実的だとみる」と記している。

退職時に政府が無料で投資の相談に応じている英国が参考になる」との見方に異論はない。だが、なぜか「日本では政府よりも企業が開く『退職セミナー』などに金融機関が協力するのが現実的」となってしまう。「金融機関が協力するのが現実的」と言える根拠も示していない。

フィデリティ退職・投資教育研究所長の野尻哲史氏」は金融業界の人間だから、「金融機関が協力するのが現実的」と訴えて、業界にメリットの大きい方向に持っていこうとするのは理解できる。

問題は藤井部長だ。投資に関するある程度の知識があれば「金融機関が協力する」形では危険だと気付けるはずだ。なのに「年金や借入金、不動産の運用なども含めてワンストップで解決策を示せる体制を築ければ確かに便利だろう」と業界寄りの姿勢を鮮明にしてしまう。

特定の金融機関に頼って「年金や借入金、不動産の運用なども含めてワンストップで解決策」を示してもらうのは非常に危険だ。この「解決策」は利用者にとってベストなものになりやすいだろうか。それとも「金融機関」にとってベストなものになりやすいだろうか。

よほどの愚か者でない限り、少し考えれば分かるはずだ。しかも「不動産」も含めた資産・負債の状況を特定の「金融機関」に全て明かしてしまうのだろう。「金融機関」にとって旨みが大きいのは分かるが、利用者はまさにカモがネギを背負っている状態だ。

筋の悪い話だと分かっていて藤井部長が金融業界寄りの記事を書いているのならば読者への背信行為だ。素直に「確かに便利だろう」と感心したのならば、藤井部長自身が立派なカモだ。いずれにしても藤井部長の主張に耳を傾ける意味はない。

さらに言えば、記事のテーマである「金融砂漠を潤す実験」が何を指すのかよく分からなかった。

放置すれば砂漠のような環境に置かれる高齢者と将来の高齢者を金融の知識やサービスで潤すべきだ。そこにイノベーションや規制改革、業界再編の芽も潜む。マイナス金利や現代貨幣理論(MMT)よりも有益な実験になるはずだ」と言うものの、具体的な「実験」の内容は示していない。

まさかとは思うが、「企業が開く『退職セミナー』などに金融機関が協力する」のが「実験」なのか。だとしたら「有益な実験」にならないのは保証できる。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~金融砂漠を潤す実験
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190822&ng=DGKKZO48816990R20C19A8TCT000


※記事の評価はD(問題あり)。藤井一明部長への評価はDで確定とする。藤井部長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

冒頭から拙さ目立つ日経 藤井一明経済部長の「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/deep-insight.html

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