石ノ森萬画館(宮城県石巻市) ※写真と本文は無関係です |
記事の中身を見ていこう。
【日経ビジネスの記事】
市場縮小で在庫の山に押しつぶされかけたラジコンカーメーカーが立ち直りつつある。戦略的に在庫に向き合うことで突破口を開いた。「持たない」ことだけが正解の時代ではなくなっている。
◎昔からそうでは?
「『持たない』ことだけが正解の時代ではなくなっている」と書いているので、「以前は『持たない』ことだけが正解の時代だった」との認識が担当者ら(武田安恵記者、庄司容子記者、菊池貴之記者)にはあるだろう。しかし、そんな時代があったのか。例えばネット通販で圧倒的な存在感を持つアマゾンも以前は「在庫は持たない」主義だったのか。あるいは在庫を抱えたが故に成長機会を逸したのか。
在庫をどの程度持つのが適正なのかはケースバイケースだ。少ない方が資金負担は少なくて済むが、販売機会を失うリスクもある。改めて説明するような話でもない。
「『在庫は悪』はもう古い」と打ち出すならば「在庫圧縮に力を入れ過ぎて不振に陥り、それに気づいて在庫を増やしたら復活できた」というストーリーが欲しくなる。しかし「京商」はそうではない。
【日経ビジネスの記事】
京商はまず、積み上がった在庫の見直しに着手する。ゴードン社は米国で、在庫を評価し、資金を融通するビジネスを展開している。その経験からアパレルなど、小売業の製品在庫を適正に保ち、売れないものは別の販売チャネルにて市場価格で売却するノウハウを培ってきた。
どんなものがどれくらいの値段で、どのような販路で売れるのか。動産評価に関するデータを持つゴードン社の助言を基に、「現在も販売可能なもの」「顧客サービスの維持に必要なもの」「滞留する可能性の高いもの」などの基準で5つに分類。自社で残す在庫と、処分・売却する在庫に分けた。
その結果、在庫は4割圧縮され、倉庫も1棟で済むようになった。売却する在庫は、渡邉社長が覚悟していた「二束三文」ではなく、適正な値段でアウトレットなど他の販路に回して資金化することができた。
◎「在庫は悪」の事例にした方が…
支援を受ける「ゴードン社」の指導によって「京商」の「在庫は4割圧縮され、倉庫も1棟で済むようになった」という。結果として「息を吹き返した」のであれば、余計な「在庫」が経営を圧迫していたはずだ。「在庫は悪」を証明している事例として取り上げた方が、まだ説得力がある。
「経営不振企業は往々にして無駄な在庫を抱えている。それを削ぎ落せば復活できる」とは言えるかもしれない。しかし「京商」の事例では「『在庫は悪』はもう古い」の根拠にはなり得ない。
この後の記事でも「店舗」「人」「物流」などに関して「持つ」企業とそうでない企業を比較しているが、どちらが良いとの結論は出していない。妥当な判断ではあるが、だったら何のために特集を企画したのかという話になる。
「再考 持たざる経営~『在庫は悪』はもう古い」というテーマを打ち出すならば「今は『持たざる』の方向に動き過ぎ。もっと持った方が企業は伸びる」と訴えてほしい。それは無理だと思えるのならば、企画をボツにすべきだ。
※今回取り上げた特集「再考 持たざる経営~『在庫は悪』はもう古い」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00148/
※特集全体の評価はD(問題あり)。武田安恵記者と庄司容子記者への評価はDを据え置く。菊池貴之記者への評価は暫定でDとする。
※武田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
LINEほけんは「好調そのもの」? 日経ビジネス武田安恵記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/line.html
※庄司記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
33%出資の三菱製紙は「連結対象外」? 日経ビジネスに問う
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33.html
「33%出資は連結対象外」に関する日経ビジネスの回答
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/33_21.html
「小林製薬=一発屋」と誤解させる日経ビジネス庄司容子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/blog-post.html
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