2019年7月4日木曜日

事業強化でも「シチズン、介護向け計器事業参入」と書く日経の怖さ

日本経済新聞の「参入」関連記事のひどさが目に付く。以前は「『本格参入』と書いているのに、以前から本格的に参入しているような…」といったレベルだったが、最近は参入済みの事業であっても、堂々と「参入」と断言している。これを企業報道部のデスクが「問題なし」と判断して読者に届けているのが怖い。
瑞鳳殿(仙台市)※写真と本文は無関係です

4日の朝刊に「もはや間違い」と思える記事を見つけたので、以下の内容で問い合わせを送った。

【日経への問い合わせ】

7月4日付の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「シチズン、介護向け計器事業参入 体温計など開発」という記事についてお尋ねします。記事では冒頭で「シチズン時計は介護や在宅医療向けの計器事業に参入する」と書いています。しかし、その後に「従来は一般消費者向けのみを扱ってきたが、薬局や量販店だけでなく医療法人などにも販路を広げる。約35億円の同事業の売上高を2021年度をめどに50億円に伸ばす」と説明しています。

既に「一般消費者向け」を扱い「同事業(=介護や在宅医療向けの計器事業)」で「約35億円」の「売上高」があるのならば、立派に「参入」を果たしているのではありませんか。御紙のこの手の記事では「本格参入」との表現でごまかすパターンをよく見かけますが、今回の記事では「参入」と言い切っています。

なのに、記事の最後では「安定的な需要が見込める介護や在宅医療向けの計器事業を強化し、業績を下支えしたい考えだ」と書いており、新規参入ではなく「介護や在宅医療向けの計器事業を強化」する話だと認めてしまっています。

シチズン時計は介護や在宅医療向けの計器事業に参入する」との説明は誤りだと考えてよいのでしょうか。あるいは「同事業」で既に「約35億円」の「売上高」があるというのが間違いなのでしょうか。記事に問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

事業を強化」ではニュース記事として弱いので「参入」を使いたいとの気持ちは理解できます。しかし、今回の記事の書き方だと「大げさだが間違いではない」と弁護するのも困難です。今のままで良いのか企業報道部全体でじっくり検討してください。記者を指導すべきデスクの責任は特に重いと思えます。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「シチズン、介護向け計器事業参入 体温計など開発
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190704&ng=DGKKZO46925420T00C19A7TJ1000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。日経の「参入」関連記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「松屋フーズはラーメン店に本格参入」に見える日経の騙し
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/04/blog-post_15.html

「本格参入」に無理がある日経「伊藤忠、日中越境通販に本格参入」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/11/blog-post_22.html

10%出資で「参入」と言える? 日経「大塚HD、血液製剤に参入」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/10.html

「個人取引に参入」は本当? 日経「オリックス、中国ネット金融に出資」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_24.html

参入済みでも「滴滴、シェア自転車参入」と打ち出す日経の悪癖
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/01/blog-post_10.html

「三桜工業、全固体電池に参入」が本当か怪しい日経の記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_20.html

参入済みなのに「フリマアプリ ヤフーも参入」と打ち出す日経の騙し
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/blog-post_28.html

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