2019年7月19日金曜日

日経夕刊1面「ネットフリックス急減速」が触れていない肝心なこと

18日の日本経済新聞夕刊1面に佐藤浩実記者が「ネットフリックス急減速 4~6月、有料会員伸び鈍化」という記事を書いている。この見出しで1面に記事を持っていくならば「急減速」 を数字で見せる必要がある。しかし、それができていない。
金華山黄金山神社(宮城県石巻市)
      ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

動画配信最大手の米ネットフリックスが17日発表した2019年4~6月期の売上高は、前年同期比26%増の49億2311万ドル(約5310億円)だった。増収は確保したが、世界の有料会員数は1億5156万人と3月末比で270万人の増加にとどまり、会社予想の「500万人の増加」を下回った。1月に値上げした米国は12万6千人の減少に転じており、成長を維持できるかどうか不透明感も出てきた。

リード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は投資家への書簡で、有料会員数が予想に達しなかったことについて、「環境は変わっておらず競争が要因だとは考えていない」と説明した。伸びが鈍化した要因は「コンテンツ」としており、7~9月期は世界で700万人の増加を見込んでいる。

しかし、動画配信の競争は今後激しくなる。今秋にはアップルとウォルト・ディズニーが独自の動画配信サービスを始め、AT&T系のワーナーメディアやコムキャスト傘下のNBCユニバーサルも20年に参入する。


◎過去の「伸び」はどうだった?

見出しから判断すれば「ネットフリックス」の「有料会員」増加ペースは急速に落ちているはずだ。しかし、それを裏付けるデータが見当たらない。「世界の有料会員数は1億5156万人と3月末比で270万人の増加にとどまり、会社予想の『500万人の増加』を下回った」からと言って「急減速」しているとは限らない。「270万人の増加」が四半期の増加数では過去最高かもしれない。

実際には「伸びが鈍化」しているのだろう。それを読者に納得してもらうためには「1~3月期」の増加数は欲しい。「急減速」を柱に据えるならば、もう少し長い期間で見た増加数の推移も入れたくなる。また「270万人の増加」がいつ以来の低水準なのかもあった方がいい。

書き出しも変えた方がいいだろう。佐藤記者は「動画配信最大手の米ネットフリックスが17日発表した2019年4~6月期の売上高は、前年同期比26%増の49億2311万ドル(約5310億円)だった」と最初に述べている。これは見出しと合っていない。

ネットフリックス急減速」という情報のニュース価値が高いと判断したから1面に持ってきたはずだ。ならば書き出しは「動画配信最大手の米ネットフリックスは有料会員の伸びが急速に鈍ってきた。世界の有料会員数は1億5156万人と3月末比で270万人の増加にとどまり~」などとした方が好ましい。

4~6月期の売上高は、前年同期比26%増の49億2311万ドル」といった情報はかなり後ろの段落に入れれば十分だ。それより「有料会員数」の伸びに関する情報をしっかり伝えたい。

1面に記事を持っていくとはどういうことなのか。そのために記事はどう構成すべきなのか。佐藤記者や国際部の担当デスクはもう一度考えてほしい。


※今回取り上げた記事「ネットフリックス急減速 4~6月、有料会員伸び鈍化
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190718&ng=DGKKZO47465530Y9A710C1MM0000


※記事の評価はD(問題あり)。佐藤浩実記者への評価も暫定でDとする。

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