2019年6月16日日曜日

日経「風見鶏~野党に唯一求めること」で木村恭子編集委員に求めること

日本経済新聞の政治コラム「風見鶏」の問題点はこれまでも指摘してきた。昔話で引っ張って当たり障りのない結論で締めるのが典型的なダメパターンだ。16日の朝刊総合3面に木村恭子編集委員が書いた「風見鶏~野党に唯一求めること」という記事は、このパターンには嵌っていない。
久留米市の千光寺(あじさい寺)
     ※写真と本文は無関係です

全体としては合格点を与えられるが、気になることが1つだけあった。記事の後半を見てみよう。

【日経の記事】

野党側が石破氏を担ぐ青写真が「絵に描いた餅」に終わらないためにはまず議席を増やし存在感を高めることが先決だ。国民民主の議席数は衆参で63。足元の支持率は社民党と同じ1%(5月10~12日調査)だ。

議席増や支持率アップのための秘策はあるか。私は「将来不安の払しょく」「安心や希望が持てる国家像」を示すことに尽きるのではないかと考える

日経新聞が18年秋に行った世論調査では「老後に不安を感じている人」は77%を占め、30~50歳代で8割を超えた。民間調査では20代の7割が将来不安を感じているとの結果もある。「将来に不安があるうちは消費にお金をかけにくい」(SMBC日興証券アナリストの下里裕吉氏)と経済への悪影響の懸念も強い。

そして、唐突に95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要だとした金融庁の金融審議会の報告書が、さらに不安をあおる形となった。

「日本の若者はなぜ希望をもてないのか」の著者で、明治大学国際日本学部長の鈴木賢志教授は「スウェーデンでは消費税が25%と日本と比べて増税感が強いにもかかわらず幸福度ランキングで常に上位にあるのは『選択肢が多く自由度が高い』ことが一因だ。今回の年金制度の議論でも、貯蓄から投資の流れを作りたいのなら、年金保険料の一部を投資に回すことができる仕組みにし、自分で投資先を選べる選択肢を設けたほうが有意義ではないか」と指摘する。

石破氏がファンだと公言するアイドルグループ、キャンディーズの元メンバーで女優の伊藤蘭さんは「まだエネルギーがあるうちに」と41年ぶりに歌手活動を再開させた。野党や石破氏にも「将来が安心な国家像」を描くエネルギーが残っているはずだ



◎「秘策」の具体策は?

議席増や支持率アップのための秘策はあるか。私は『将来不安の払しょく』『安心や希望が持てる国家像』を示すことに尽きるのではないかと考える」と木村編集委員は言う。しかし具体的な「秘策」は示していない。

強いて言えば「明治大学国際日本学部長の鈴木賢志教授」が提唱する「年金保険料の一部を投資に回すことができる仕組み」か。これは確定拠出型年金の考え方に近いものだと思える。「自分で投資して上手くいけば年金が増えますよ。その代わり失敗したら年金は減りますよ」というものだ。ダメとは言わないが「将来不安の払しょく」や「安心」につながるとは考えにくい。

個人的には「将来不安の払しょく」など不可能だと思う。「老後に不安を感じている人」が「77%」いて、これを10%未満にできたら「払しょく」が実現するとしよう。ベーシックインカムの導入が最も効果がありそうな気がするが、制度化のハードルは高いし、導入できても「不安を感じている人」を5割に減らせればいい方ではないか。

「そんなことはない。不安は払拭できる」と木村編集委員が信じているのならば、紙面を通じて「秘策」を伝授してほしい。

野党や石破氏にも『将来が安心な国家像』を描くエネルギーが残っているはずだ」と木村編集委員は記事を締めている。ならば同様のメッセージを送ろう。

アイドルグループ、キャンディーズの元メンバーで女優の伊藤蘭さんは『まだエネルギーがあるうちに』と41年ぶりに歌手活動を再開させた。木村恭子編集委員にも『将来が安心な国家像』を描いて読者に伝えるエネルギーがまだ残っているはずだ



※今回取り上げた記事「風見鶏~野党に唯一求めること
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190616&ng=DGKKZO46115120U9A610C1EA3000


※記事の評価はC(平均的)。木村恭子編集委員への評価は暫定Dから暫定Cへ引き上げる。木村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

労働分配率の分母は「利益」? 日経 木村恭子編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_28.html

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