2019年4月9日火曜日

データ比較に問題あり 週刊ダイヤモンド「バブル時代は本当によかった?」

週刊ダイヤモンド4月13日号の特集「数式なしで学べる!統計学『超』入門」を担当した前田剛記者と竹田孝洋編集委員はデータの扱いが上手いと自覚しているのだろう。でなければ、この手の特集に手を出そうとはしないはずだ。しかし特集の中の「バブル時代は本当によかった?」という記事を読むと、2人のデータ解釈力に疑問符を付けたくなる。
流川桜並木(福岡県うきは市)
      ※写真と本文は無関係です

記事の前半は以下のようなっている。

【ダイヤモンドの記事】

事あるたびに「バブル時代はよかった」とつぶやく「バブルおじさん」たち。公的統計でその真偽を確かめてみた

平成の世が終わろうとする今日、いまだに「バブル時代は本当によかった」と1990年前後の時代を懐かしむ「バブルおじさん」たちがいる。

かく言う記者もバブル世代ど真ん中で、バブル時代は華やかで楽しかったと思っているバブルおじさんの一人だ。何とかしてバブル時代がよかったことを今どきの若者にも知らしめたい。そこで幾つかの公的統計を調べてみた。

下図は現在の生活に対する満足度を世代別に聞いた結果だ。

バブル期に20代で、派手にお金を使った経験のある現在の50代から見れば、「現在の20代は使えるお金がなくてかわいそう」と思えるかもしれない。

ところが、調査結果は全く正反対となった。50~59歳の満足度が72.4%なのに対し、18~29歳の満足度は83.2%と11ポイント近く高い。この結果から見る限り、今どきの若者はちっともかわいそうではないのだ。



◎根拠になる?

バブル時代はよかった」かどうか「公的統計でその真偽を確かめ」るのが記事の柱だ。「現在の生活に対する満足度を世代別に聞いた結果」として「50~59歳の満足度が72.4%なのに対し、18~29歳の満足度は83.2%」となったからと言って、これが「バブル時代はよかった」かどうかを考える材料になるのか。

バブル時代」の若者の「生活に対する満足度」を「今どきの若者」と比べるのならば分かる。しかし、「バブル時代」を経験した今の「50~59歳の満足度」を「今どきの若者」と比較しても意味はない。

50~59歳の満足度」が低いのならば、「バブル時代はよかった」との見方を裏付けている可能性もある。「バブル時代はよかった(が、今はよくない)」場合、「50~59歳の満足度」は低くなりやすいはずだ。

付け加えると、自分自身も「バブル時代」の若者だったが、当時は「今の状況では希望が持てない。とにかく不動産価格は下がってくれ」と祈るような気持ちだったのを覚えている。「バブル時代はよかった」と思ったことはない。

「多少給料が上がっても、今の状況では職場から電車で1時間以内に家を持つのは難しい。そして、既に不動産を持っている人の多くはそれだけで立派な資産家だ。不動産が値下がりしない限り、この格差は決定的だ」と当時は感じていた。なのでバブル崩壊は本当に嬉しかった。

今回の記事の筆者は「バブル世代ど真ん中で、バブル時代は華やかで楽しかったと思っているバブルおじさんの一人」らしい。不動産の含み益が既にあったのならば分かるが、違うのならば「よくそんなに楽観的でいられたな」とは思う。

バブル時代は本当によかった」と「懐かしむ『バブルおじさん』たち」が多いのかもしれないが、個人的には絶望に近いものを感じた「時代」だった。


※今回取り上げた記事「バブル時代は本当によかった?
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/26275


※記事の評価はD(問題あり)。筆者は特定できないが、特集を担当した前田剛記者と竹田孝洋編集委員の共同執筆と見なす。前田記者への評価はDで確定させる。武田編集委員への評価はDを据え置く。


※前田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

海外M&A「9割失敗」が怪しい週刊ダイヤモンドの特集
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/04/blog-post_16.html

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