2019年3月20日水曜日

6%増収でも「ドラッグストアは成長の踊り場」と日経は言うが…

20日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「ビジネスTODAY~ドラッグ店 消耗戦に 売上高7兆円見込むも利益率低下 人件費・爆買い鈍化が重荷」という記事は問題が多かった。まずは冒頭の「ドラッグストアが成長の踊り場に立っている」との見立てが苦しい。記事では以下のように説明している。
小石川後楽園(東京都文京区)
     ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

ドラッグストアが成長の踊り場に立っている。2018年度は総売上高で7兆円を突破する見通しだが、人件費上昇や訪日客の爆買いの一服で利益率は低下傾向だ。これまでドラッグストアは高収益の医薬品や化粧品のもうけを元手に、食品や日用品の安値攻勢でスーパーやコンビニエンスストアの牙城を切り崩してきた。一段の成長に向けた店舗拡大は消耗戦になりつつある。

日本チェーンドラッグストア協会の調査によると、18年度の全店売上高は前年度比6.2%増の7兆2744億円となるもようだ。店舗の純増数も過去15年で最高となり、合計の店舗数は2万店を超えるようだ。市場規模はこの3年間、年率5~6%増のペースで拡大している。

一方、百貨店は18年に前年比微減の5兆8870億円、コンビニは同2.6%増の10兆9646億円だった。ドラッグストアは百貨店を16年度に抜き去り、コンビニの背中を猛追する格好だ。



◎「6.2%増」でも「踊り場」?

ドラッグストア全体の「成長」を見る場合、売上高や店舗数で判断するのが普通だろう。「18年度の全店売上高は前年度比6.2%増」「店舗の純増数も過去15年で最高」「市場規模はこの3年間、年率5~6%増のペースで拡大」となっているのならば「成長の踊り場に立っている」とは言い難い。

筆者ら(池下祐磨記者と山田航平記者)は利益で「成長」を見ているのかもしれない。だが、「市場規模」が順調に拡大している業界の場合、「利益率は低下傾向」だとしても「成長の踊り場に立っている」とは言わない気がする。

どうしても利益で「成長」を語りたいのならば「ドラッグストアが利益面で成長の踊り場に立っている」などと書いた方がいい。

さらに言えば、記事では「マツモトキヨシホールディングス、サンドラッグ、ココカラファイン、スギHD、ウエルシアHDの大手5社は、18年度第3四半期にマツキヨを除く4社が営業減益となった」とは書いているものの、「ドラッグストア」全体の利益は不明だ。「大手5社」で見た利益の額にも減少率にも触れていない(記事に付けたグラフから減益率はある程度分かるが…)。

見出しが「ドラッグ店 消耗戦に」となっていて「踊り場」を使っていないのは、整理部の担当者も「成長の踊り場」になっていないと感じたのかもしれない。

もう1つ気になるのが「人件費上昇や訪日客の爆買いの一服で利益率は低下傾向だ」と最初の段落で触れているのに、最後まで読んでも「利益率」のデータが一切出てこないことだ。いつと比べてどの程度の「低下」なのかも不明。これでは苦しい。

次は文の書き方について注文を付けたい。

【日経の記事】

爆買いの一服で高収益の医薬品や化粧品のもうけを元手に、食品や日用品で安値攻勢をかける戦略は成り立たなくなる可能性がある。



◎語順が…

筆者らは「爆買いの一服で~成り立たなくなる可能性がある」と言いたいのだろう。しかし、途中に読点もあるので関係が分かりにくい。「『爆買いの一服で高収益』の医薬品」とも取れる。これは語順を変えるだけで簡単に問題を解消できる。

【改善例】

高収益の医薬品や化粧品のもうけを元手に食品や日用品で安値攻勢をかける戦略は、爆買いの一服で成り立たなくなる可能性がある。

◇   ◇   ◇

どちらが分かりやすいか、池下祐磨記者と山田航平記者はしっかり比べてほしい。

最後に記事の終盤にもツッコミを入れておく。

【日経の記事】

ウエルシアHDは18年3月に中堅の一本堂を買収したが、生き残りのための再編はまだ緒に就いたばかりだ。人手不足解消のため、後継ぎのいない地域の調剤薬局の買収を検討する動きも出てきた。頭打ちのコンビニ市場を追い越せるか。快進撃してきたドラッグストアは試練の時を迎えた。



◎本当に「まだ緒に就いたばかり」?

本当に「生き残りのための再編はまだ緒に就いたばかり」なのか。これまでも多くの「再編」があったはずだ。「ウエルシアHD」に限っても、2006年に「いいの」と「ナカヤ」を吸収合併し、その後も次々と多くの会社を吸収合併したり子会社化したりしているようだ。「18年3月に中堅の一本堂を買収」するまでの「再編」は「生き残りのため」ではなかったとの判断なのか。ちょっと考えにくい。


※今回取り上げた記事「ビジネスTODAY~ドラッグ店 消耗戦に 売上高7兆円見込むも利益率低下 人件費・爆買い鈍化が重荷
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190320&ng=DGKKZO42663730Z10C19A3TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)。池下祐磨記者と山田航平記者への評価も暫定でDとする。

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