2018年12月8日土曜日

「D&G」問題の解説に難あり 日経ビジネス広岡延隆 上海支局長

 日経ビジネスの広岡延隆 上海支局長は問題のある書き手のようだ。12月10日号の「世界鳥瞰 FRONTLINE 上海~D&Gを直撃、同調行動の破壊力」という記事からは、そう判断するしかない。
白池地獄(大分県別府市)※写真と本文は無関係

記事では「イタリアの高級ブランド『ドルチェ&ガッバーナ(D&G)』が中国市場を一気に失う事態に陥った」件で「デジタル最適化の副作用」という小見出しを付けて以下のように解説している。

【日経ビジネスの記事】

ほぼすべてのECサイトが商品の取り扱いを即座に停止するという、他の国ではあり得ない事態が起きたのは、中国がデジタル技術に最適化した社会に急速に変化しつつあることと関係している

商品の品定めから購買、決済、商品配送などがすべてスマホ上で完結する、高度に効率化された仕組みが出来上がりつつある。中国の都市部を対象にした調査ではデジタル決済の普及率は98.3%に及ぶ。ソーシャルメディアの影響力は大きく、これを味方につければ企業は大きなメリットが得られる。

ただし、これらの効用が逆回転した時の破壊力も他に類を見ない。大衆が同調して対象に苛烈な圧力を加えることにためらいがない。これに共産党一党支配の強固な体制が輪をかける。D&Gの事例はこの恐ろしさを示している。


◎説明になってる?

上記の説明で「ほぼすべてのECサイトが商品の取り扱いを即座に停止するという、他の国ではあり得ない事態が起きたのは、中国がデジタル技術に最適化した社会に急速に変化しつつあることと関係している」と納得できただろうか。

デジタル技術に最適化した社会」になれば、様々な「ECサイト」が同じ選択をするようになると広岡支局長は考えているのだろう。しかし、根拠らしきものは提示していない。

他の国ではあり得ない」かどうか分からないが、広岡支局長の考えでは「他の国」では「デジタル技術に最適化した社会」からまだ遠いので「ECサイト」の行動にバラツキが生じると見ているのだろう。だが、やはり理由は謎だ。普通に考えれば、あまり関係なさそうに思える。

ある企業への社会の反発が強烈ならば中国でも「他の国」でも「ほぼすべてのECサイトが商品の取り扱いを即座に停止」するし、反発がそれほどでもなければ対応が分かれると考えるのが普通だろう。反発が強くなりやすいかどうかに国民性の違いはあるだろうが…。

共産党一党支配の強固な体制」の下で政府の指示があったとすれば、「ほぼすべてのECサイトが商品の取り扱いを即座に停止」したのも分かる。ただ、そうは書いていないし、それだと「デジタル技術に最適化した社会」との関連が説明できない。

色々考えてみたが、やはりよく分からない。こちらの読解力不足なのだろうか。

他にも気になる点があるので付け加えておきたい。

(1)「商品配送」が「スマホ上で完結」?

商品の品定めから購買、決済、商品配送などがすべてスマホ上で完結する、高度に効率化された仕組みが出来上がりつつある」と広岡支局長は言うが、チケットなど一部の商品を除けば「商品配送」が「スマホ上で完結」するとは思えない。それはさすがに広岡支局長も分かっているだろう。説明が雑だ。


(2)「デジタル決済の普及率は98.3%」?

日銀の「モバイル決済の現状と課題」という資料には「中国でも、都市部の消費者を対象に実施された調査によれば、回答者の 98.3%が過去3カ月の間にモバイル決済を『利用した』と答えたとの報道(2016 年 5 月)もある」との記述がある。今回の記事に出てくる「中国の都市部を対象にした調査ではデジタル決済の普及率は98.3%に及ぶ」との説明も同じ「調査」を基に書いていると推測できる。

だとすれば「デジタル決済の普及率は98.3%」との説明は問題がある。日銀を信じれば、調査は「モバイル決済」に関するものだ。「モバイル決済」は「デジタル決済」の一部に過ぎない。この辺りは正確に書いてほしい。

都市部」限定の調査である点にも留意する必要がある。この場合、農村部を含めて「中国がデジタル技術に最適化した社会に急速に変化しつつある」かどうかを判断する根拠にはならない。


※今回取り上げた記事「世界鳥瞰 FRONTLINE 上海~D&Gを直撃、同調行動の破壊力
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/world/120400685/?ST=pc


※記事の評価はD(問題あり)。広岡延隆上海支局長への評価はDを据え置く。

1 件のコメント:

  1. 「広岡延隆上海支局長への評価はDを据え置く」これ正解だった事が現在も証明されています。広岡氏は中国のデフォルトには一切触れずに「中共独り勝ち」を連呼していますね。北京大学の失業率の記事も読んでない。いや、そもそも中国語が読めない?と言わざるを得ません。

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