カトリック浦上教会(長崎市) ※写真と本文は無関係です |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
1997年、橋本龍太郎首相が行財政改革を進めているときのことだ。橋本政権で進める改革にアドバイスをもらうため、官僚が竹下登元首相を訪ねると「中曽根財政、竹下税制という言葉があったんだ」とにこやかに語ったという。
竹下氏は大平正芳政権、その後の中曽根康弘政権で蔵相を務めている。この時、話を聞いた元官僚は「中曽根政権の蔵相時代を含め『あの頃の税財政はすべて自分が仕切った』という自負を感じた」と振り返る。
「竹下税制」と誇ったのは89年に首相として消費税を導入したからだ。竹下氏はよく「79年に財政再建の国会決議をして10年かけて89年の消費税に持っていった」と口にした。
79年には大平首相が導入を目指した一般消費税が頓挫。すると与野党で「財政再建は一般消費税(仮称)によらず、まず行政改革、歳出合理化などを推進」と決議した。当時蔵相だった竹下氏が幅広い与野党人脈を生かし、決議に持ち込んだ。
決議は当初「消費税を導入させないため」とみられたが、その後の中曽根政権は行革と歳出改革を実施した。竹下氏が「中曽根財政」も高く評価したのは79年決議で設定したハードルを、竹下氏が蔵相を務めた中曽根政権でクリアして消費税を導入したからだ。
10年計画で「竹下税制」を完成させた竹下氏だが自民党で「税の権威」とされる税制調査会長には就いていない。歴代首相にも税調会長経験者はいない。
税調会長OBの柳沢伯夫氏はある税調会長が首相に呼ばれた際に「ゴマスリみたいに首相官邸に行くのは税調の伝統に反しますよ」と苦言を呈したという。その時は調整の末、首相が党本部に来て総裁室で会う体裁をとった。小泉純一郎首相も「税調のドン」と呼ばれた山中貞則氏に会うため党本部に足を運んだ。
首相と税調会長が距離をとったのはなぜか。柳沢氏に尋ねると「選挙に近いところが税をやると、ゆがむことがおびただしい」と説く。「税で票を買うことはできない。人気のある増税なんてない」とも話す。
選挙に最も近いのは首相だ。有権者の意向には敏感で政権維持のために増税は避けたくなる。一方、税のプロを自任する税調は望ましい税体系を追求する。税調会長なら選挙を意識する官邸と距離を置き、超然と不人気政策を追い求めるべきだ、という文化もある。
首相を選ぶ与党議員にとって重要なのは足元の選挙だ。かたくなに不人気政策を主張する役回りを求められる税調会長を「選挙の顔」である首相に推したくはない――。税調会長出身の首相がいない背景はこういうところだろうか。
税調は毎年の税制改正で細かな制度まで体系的に定め、絶大な決定権を握ってきた。緻密な税理論と豊富な知識をもとに、各業界と、その意向を代弁する族議員の間で利害調整をしてきたのは確かだ。ただ力が及ぶのは党内までだ。
政権の命運を左右する国民全体を相手にするようなテーマは税調だけでは扱えない。大平氏の一般消費税も中曽根氏の売上税も、実現しなかったとはいえ、政治課題になったのは首相が掲げたからだ。国会で多数を握る与党が選んだ首相という基盤があるからこそ、国民全体の利害に関わる増税を問うことができる。
竹下氏は79年の国会決議について「与野党を問わず大枠をかける意味で必要だった」と語っていた。決議は全会一致。国民全体の支持を得る形をつくり、増税につなげた。同じ増税という目標でも首相と税調会長の目指し方には違いがある。
◎訴えたいことがないのなら…
記事に出てくるのは最も新しい話でも「小泉純一郎首相」の時だ。「今の政治に関して特に言いたいこともない。でも紙面は埋めなきゃいけないんで、自分の知っている昔話をあれこれ書いてみました」といったところか。昔話から入るのはいいとしても、どんなに長くても前半までだろう。後半は今か将来を語ってほしい。
政治部内で調整して「今の政治に関して訴えたいことがある人」に「風見鶏」を任せるべきだ。そういう人がいないのならば「風見鶏」は打ち切るしかない。
ついでに、今回の記事に関して他に気になった点も挙げておきたい。
(1)「あの頃の税財政はすべて自分が仕切った」はずでは?
「竹下氏」は「あの頃の税財政はすべて自分が仕切った」という「自負」を持っていたようだ。その「竹下氏」は「『税の権威』とされる税制調査会長には就いていない」。なのに「税調は毎年の税制改正で細かな制度まで体系的に定め、絶大な決定権を握ってきた」とも書いている。
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「税調」に「絶大な決定権」があったのならば、「あの頃の税財政はすべて自分が仕切った」という「竹下氏」の「自負」が勘違いなのだろう。どちらなのか読者に分かるように書くべきだ。
(2)「柳沢氏」のコメントに無理が…
「税調会長OBの柳沢伯夫氏」のコメントにも無理がある。「柳沢氏」が自分たちをよく見せようと無理のあるコメントをするのは当然で、批判するつもりもない。それをそのまま記事に使う佐藤次長の問題だ。
まず「首相と税調会長が距離をとったのはなぜか。柳沢氏に尋ねると『選挙に近いところが税をやると、ゆがむことがおびただしい』と説く」が苦しい。「税調会長」も国会議員ならば「選挙」とは十分に近い。「首相」なら歪むが「税調会長」ならば大丈夫とは思えない。
「税で票を買うことはできない。人気のある増税なんてない」とも「柳沢氏」はコメントしている。「人気のある増税なんてない」にも同意しない(例えば、超富裕層への増税が国民全体で見れば「人気」を得る可能性はある)が、仮にそうだとしても「税調」はひたすら「増税」を求めたわけでもないだろう。税制面での優遇や減税で“票を買うこと”はできるはずだ。
(3)「党内」に力が及ぶならば…
「税調」について「力が及ぶのは党内までだ」と佐藤次長は言う。しかし、「税制」に関する「絶大な決定権」を政権与党の「党内」で持っているのならば「政権の命運を左右する国民全体を相手にするようなテーマ」も「税調だけで」決められる気がする。
「消費税を導入する」と「税調」が打ち出せば「党内」では誰も逆らえないはずなので、「国会で多数を握る与党が選んだ首相」も「税調」の方針に従うしかない。そこまでの力が「税調」にないのならば「絶大な決定権」に疑問符が付く。
※今回取り上げた記事「風見鶏~首相と税調会長のはざま」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181216&ng=DGKKZO38992160V11C18A2EA3000
※記事の評価はD(問題あり)。佐藤理政治部次長への評価も暫定でDとする。
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