2018年9月20日木曜日

米小売市場は「寡占」と誤解した相場研究家の市岡繁男氏

相場研究家の市岡繁男氏は「寡占」の意味を理解していないようだ。週刊エコノミスト9月25日号の「今よみがえるラビ・バトラの予測~トルコ危機とスペインへの波及」という記事からは、そう判断できる。「米アマゾン」が「全米の小売り売り上げ(約5・2兆ドル)の5%を握っている」のは「寡占以外の何物でもない」と市岡氏は言うが、とても同意できない。
有明海沿岸(佐賀県太良町)※写真と本文は無関係です

エコノミスト編集部には以下の内容で問い合わせを送った。


【エコノミストへの問い合わせ】

週刊エコノミスト 編集長 藤枝克治様  相場研究家 市岡繁男様

9月25日号の「今よみがえるラビ・バトラの予測~トルコ危機とスペインへの波及」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下の記述です。

なかでも象徴的なのは先日、株価時価総額が1兆ドルを突破した米アマゾンの事例だろう。今年7月、米CNBCオンライン版は、昨年末の米通販業界におけるアマゾンの売り上げシェアは44%で、今年末は49%(2582億ドル)に達するという民間調査会社の予測を報じた。米商務省センサス局のデータによると、小売り全体に占める通販の割合は約1割なので、同社は全米の小売り売り上げ(約5・2兆ドル)の5%を握っていることになる。これは寡占以外の何物でもない

寡占」とは「少数の供給者が市場を支配している状態」(デジタル大辞泉)を指します。「米アマゾン」が「全米の小売り売り上げ(約5・2兆ドル)の5%を握っていること」を根拠に市岡様は「これは寡占以外の何物でもない」と言い切っています。しかし、それだけでは何とも言えません。「寡占」かどうかを判断するには「少数の供給者が市場を支配している」かどうかを知る必要があります。

調べてみると、全米小売業協会の会員企業だけで1万8000社に達するようです。常識的にも、米国の小売市場を「少数の供給者」が支配しているとは考えにくいでしょう。

米通販業界」に限っても「寡占」とは言えません。「米CNBCオンライン版」の記事では、シェア上位10社を紹介しています。つまり「米通販業界」には10社以上の「供給者」がいます。

米アマゾン」に関する「これは寡占以外の何物でもない」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。間違いであれば、次号での訂正を求めます。

せっかくの機会なので言葉の使い方にも注文を付けておきます。記事には「たとえトルコがデフォルト(債務不履行)したとしても、経済規模が小さいので国際金融危機に直結することはないという見方が一般的だ」との記述があります。

この中の「デフォルト(債務不履行)した」に違和感を覚えました。個人的には「デフォルトする」「債務不履行する」とは言わない気がします。例えば「トルコがデフォルト(債務不履行)に陥ったとしても」とすれば不自然さは感じません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御誌では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を取っているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「今よみがえるラビ・バトラの予測~トルコ危機とスペインへの波及
http://mainichi.jp/economistdb/index.html?recno=Z20180925se1000000065000


※記事の評価はD(問題あり)。市岡繁男氏への評価も暫定でDとする。

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