2018年7月10日火曜日

間違い目立つ週刊ダイヤモンド「ハイブリッド戦争」特集

週刊ダイヤモンド7月14日号の特集3「西側の同盟揺るがす『ハイブリッド戦争』 欧州・ロシアの新冷戦」の中の地図に明らかな誤りがあった。ダイヤモンド編集部には以下の内容で問い合わせを送っている。訂正などの対応を注視したい。
佐世保港(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です


【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド 編集長 深澤献様   千本木啓文様

7月14日号の特集3「西側の同盟揺るがす『ハイブリッド戦争』  欧州・ロシアの新冷戦」の最初に出てくる「ロシア侵略に身構えるバルト3国~NATO常駐も拭えぬ不安」という記事について、問題点を指摘させていただきます。

(1)モンテネグロについて

記事に付けた地図ではモンテネグロが「NATO加盟国」に入っていません。同国は2017年にNATOに加盟しているはずです。

(2)グリーンランドについて

地図ではデンマークを「NATO加盟国」としているのに、同国の領土であるグリーンランドを非加盟国と同じ色にしています。

(3)カザフスタンとアルメニアについて

地図ではベラルーシのみを「ロシアの同盟国」に色分けしています。しかし、カザフスタンとアルメニアも「ロシアの同盟国」だと思えます。「CSTO」という「旧ソ連構成諸国による安全保障・領土保全を目的とする条約機構」(デジタル大辞泉)があり、両国は加盟国となっています。なので、両国を「ロシアとの同盟国ではない」と見なすのは無理があります。

(4)リトアニアについて

記事ではリトアニアに関して以下のように記しています。

だが、こうした対策でも克服し難い弱点が同国にはある。ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシに挟まれた南部の国境だ。100キロに満たないこの国境を占領されればリトアニアは孤立し、NATOは戦力を陸送するのが難しくなる

国境を占領されれば」はやや不自然な表現ですが、ここでは「国境沿いの地域を占領されれば」という意味だと理解して話を進めます。「南部の国境」を占領されても、「北部の国境」が残っています。北側の隣国はラトビアで、リトアニアと同じ「NATO加盟国」です。

記事では「NATOも手をこまねいているわけではない。17年にはバルト3国に約3000人の多国籍部隊を配置」とも書いています。であれば、「南部の国境」を経由しなくても「NATOは戦力を陸送」できるので、「リトアニアは孤立」しないでしょう。

また、「ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシに挟まれた南部の国境」と書くと、「南部の国境」では他の国と隣り合っていないように思えますが、NATO加盟国であるポーランドともリトアニアは国境を接しています。

千本木様はポーランドとリトアニアの国境地帯もロシア・ベラルーシ連合に占領されるとの前提で記事を書いているのでしょうか。だとしたら、その点を明示すべきです。

余談ですが、「孤立」という点では「ロシアの飛び地、カリーニングラード」の方が深刻です。リトアニアかポーランドを経由しない限り「戦力を陸送」できません。

さらに付け加えると「ロシアの飛び地、カリーニングラードとロシアの同盟国、ベラルーシ」と表記すると、読点の影響で「ロシアの飛び地」「カリーニングラードとロシアの同盟国」「ベラルーシ」の3つに分かれて見えるので、読みづらさを感じます。「ロシアの飛び地カリーニングラードと、ロシアの同盟国ベラルーシ」とした方が良いでしょう。

ここまで4つに分けて記事の問題点を見てきました。これらについては記事に誤りがあると考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

(1)(2)は明らかな誤りだと見ています。次号での訂正記事の掲載を求めます。(3)も誤りの可能性が高いでしょう。(4)は訂正を出すほどの話だとは思いませんが、説明に無理があります。

問い合わせは以上です。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

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※今回取り上げた記事「ロシア侵略に身構えるバルト3国~NATO常駐も拭えぬ不安
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/23971


※深澤献編集長と千本木啓文記者への評価は、次号での訂正の有無などを見てから決めたい。

追記)モンテネグロに関しては、2週間後の7月28日号に訂正が出た。グリーンランドなどの訂正はなく、問い合わせへの回答も届いていない。これを踏まえて特集の評価はE(大いに問題あり)とする。また、深澤献編集長への評価はEを維持する。千本木啓文記者への評価はEで確定とする。

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