流川桜並木(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です |
【FACTAへの問い合わせ】
FACTA 主筆 阿部重夫様 発行人 宮嶋巌様 編集長 宮﨑知己様
7月号の「FACTA銘柄 Sin-Bin Box KNT-CT (東証1部)『親子上場』の罪深き天下り社長失言」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「KNTはプロの機関投資家の間で『ネット・ネット』と呼ばれている。英語で『差し引き』という意味なのだが、現預金といった本業には直結しない手元流動性が『差し引き』で時価総額を上回る企業を指す。何のことはない。経営資源を有効活用していない『ダメ経営』を金融言語に変換しただけだ。KNTの場合、時価総額450億円に対し手元流動性は680億円。無借金なので、時価で買収したら230億円のお釣りが帰ってくる計算だ」
<質問その1>
ここで言う「ネット・ネット」とは「ネット・ネット株」を指すのでしょう。PRESIDENT Onlineでは今年2月9日付の記事で以下のように解説しています。
「ネットネット株とは、アメリカの投資家ウォーレン・バフェットの師匠に当たる人物、経済学者ベンジャミン・グレアムが提唱した投資方法です。一言でいうと、企業の流動資産(現金など)から負債総額を引いた額の3分の2が時価総額より多い銘柄が、ネットネット株ということです」
これが「ネット・ネット株」の一般的な定義だと思えます。しかし御誌は「流動資産」ではなく「手元流動性」を用いています。さらに、負債を差し引くとも、「3分の2」に割り引くとも書いていません。御誌の「ネット・ネット」に関する説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
<質問その2>
今回の記事では「KNT」に関して「手元流動性は680億円」と記しています。同社の決算短信で今年3月末の数字を見ると、現預金334億円、預け金347億円なので、これらを合計して「手元流動性は680億円」と書いたのでしょう。
「手元流動性」は「現預金や償還・売却期限が1年以内の有価証券など、非常に換金性の高い流動資産のこと」(野村証券の証券用語解説集)です。だとすれば、預け金は「手元流動性」には当たりません。取引先などに預けているのですから「非常に換金性の高い流動資産」とは言えません。
記事中の「手元流動性は680億円」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
<質問その3>
「無借金なので、時価で買収したら230億円のお釣りが帰ってくる計算だ」との説明にも疑問が湧きます。「KNT」は「無借金」かもしれませんが、負債ゼロではありません。営業未払金と未払い金の合計が3月末時点で約300億円あります。これを考慮すれば「230億円のお釣り」とはなりません。「時価で買収したら230億円のお釣りが帰ってくる計算だ」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
<質問その4>
「プロの機関投資家」という表現が引っかかりました。「機関投資家」は全て「プロ」ではないのですか。それとも「アマの機関投資家」もいるのでしょうか。
<質問その5>
「現預金といった本業には直結しない手元流動性」という説明にも疑問が残ります。「現預金」は「本業には直結しない」のですか。仕入れ代金や給料を支払うために「現預金」を持っていても「本業には直結しない」と言えるでしょうか。
<質問その6>
最後に、記事中の「『親子上場』問題の本質は、少数株主権の侵害にある。少数株主からも資本を得ているのに、大株主である親会社が間接的に放漫経営できるからだ」との説明を取り上げます。「少数株主権」の定義は以下の通りとしましょう。
「一人または複数の株主の持株数を合算して、発行済株式総数の一定割合または一定数以上の株式を保有することを要件として行使できる株主権。多数派株主の専横を制し、少数株主の利益を保護するために認められている。株主総会招集請求権、取締役・監査役・清算人の解任請求権、会計帳簿閲覧権など」(デジタル大辞泉)
「親子上場」だと「株主総会招集請求権、取締役・監査役・清算人の解任請求権、会計帳簿閲覧権」が認められなくなるのでしょうか。常識的には考えられません。「大株主である親会社が間接的に放漫経営できる」かもしれませんが、「少数株主権の侵害」とは別問題ではありませんか。
「『親子上場』問題の本質は、少数株主権の侵害にある」との説明は誤りだと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「FACTA銘柄 Sin-Bin Box KNT-CT (東証1部)『親子上場』の罪深き天下り社長失言」
https://facta.co.jp/article/201807029.html
※記事の評価はD(問題あり)。今回の記事については以下の投稿も参照してほしい。
KNTの「親子上場」を批判するFACTAに異議あり
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/kntfacta.html
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