2018年6月28日木曜日

「今は中ロと直接向き合ってない」? 佐藤純之助氏の誤解

ジャーナリストの佐藤純之助氏がどんな人物か全く知らないが、国際情勢に関する記事を任せるのは避けた方がいい。週刊エコノミスト7月3日号の「変質する国際秩序 日米同盟 トランプ流『ディール』に揺らぐ日本 安保で米国からの自立を求める声も」という記事を読んでそう感じた。以下が問題のくだりだ。
米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)

【エコノミストの記事】

陸軍主体の在韓米軍は北朝鮮の南進に備えるために駐留しているというのが一般的な見方だが、ソウル南方の烏山(オサン)には空軍基地があり、南部の星州(ソンジュ)には地上配備型迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」もある。空軍は行動範囲が広く、THAADのレーダーは中国やロシアも監視できるとされ、在韓米軍は北東アジア地域の抑止力の一助となっている。

それが縮小、撤退すれば、日本は韓国という緩衝地帯を失い、価値観を共有しているとは言い難い中国やロシアという旧共産圏の国々と直接向き合うことになる。「自由主義陣営の防衛線が38度線から対馬海峡に降りてくる。日本は最前線国家になる」と、防衛省の元高官は懸念する

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問題は2つある。

◎問題その1~「韓国という緩衝地帯を失う」?

それ(在韓米軍)が縮小、撤退すれば、日本は韓国という緩衝地帯を失い、価値観を共有しているとは言い難い中国やロシアという旧共産圏の国々と直接向き合うことになる」と佐藤氏は断言するが、在韓米軍の「縮小、撤退」で韓国が「中国やロシアという旧共産圏の国々」の勢力圏に入るとの前提に無理がある。例えば台湾に米軍基地はないが、だからと言って中国やロシアが台湾を自分たちの陣営に引き込めているわけではない。


◎問題その2~これまでは「直接」向き合ってなかった?

それ(在韓米軍)が縮小、撤退すれば、日本は韓国という緩衝地帯を失い、価値観を共有しているとは言い難い中国やロシアという旧共産圏の国々と直接向き合うことになる」という説明には、これまでは「直接向き合うこと」がなかったとの前提を感じる。佐藤氏は日本周辺の地図を見たことがないのか。

大陸部に限っても、ロシアとは日本海を挟んで、中国とは東シナ海を挟んで「直接向き合う」状況が続いている。佐藤氏は「防衛省の元高官」に色々と吹き込まれたのかもしれないが、少し考えれば「自由主義陣営の防衛線が38度線から対馬海峡に降りてくる。日本は最前線国家になる」という見方に問題があるのは分かるはずだ。


※今回取り上げた記事「変質する国際秩序 日米同盟 トランプ流『ディール』に揺らぐ日本 安保で米国からの自立を求める声も
https://mainichi.jp/economistdb/index.html?recno=Z20180703se1000000057000


※記事の評価はD(問題あり)。佐藤純之助氏への評価も暫定でDとする。

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