東本川の桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です |
【ダイヤモンドの記事】
2000年に就任した大坪会長は、翌01年の秋以降に「段ボール原紙は、過去のように需要を無視して増産するのではなく、規模に見合った在庫を管理しながら、再生産が可能な新しい価格体系を作ろう」と業界全体に呼びかけた。
それから、系列化を進めていた川中部門の段ボールシートや、段ボール函でも、同様の考え方で臨むが、最終的な需要家がなかなか値上げを認めてくれない状況では、専業メーカーの抵抗が激しく、そう簡単には進まなかった。
◎価格カルテルを呼びかけた?
「2000年に就任した大坪会長」は「再生産が可能な新しい価格体系を作ろう」と「業界全体に呼びかけた」らしい。これは独占禁止法が禁止している価格カルテルを大坪会長から他社に働きかけているとも取れる。
大坪会長は本当に「再生産が可能な新しい価格体系を作ろう」と同業他社に働きかけたのだろうか。文脈から判断すると「新しい価格体系」を作るとは、値上げをするという意味だと思える。「専業メーカーの抵抗が激しく、そう簡単には進まなかった」らしいが、「業界全体に呼びかけた」だけでも経営者としての常識を疑われる行為だ。
筆者の池冨仁記者はその辺りを問題と感じず、大坪会長の功績のように紹介している。経済記者を続けていくのならば「『再生産が可能な新しい価格体系を作ろう』と同業他社に呼びかけるような経営者は問題ありでは?」と疑問を持てるようになってほしい。
「レンゴー、あるいは大橋会長に誘導されて中立的な判断ができなくなっているのかな」と感じる記述は他にもあった。
【ダイヤモンドの記事】
14年度のみ営業利益の額が激減したのには理由がある。過去10年以上、レンゴーは断続的に続いた値上げ要請ではフルコスト主義の方針を貫いてきた。だが、12~13年は他のメーカーが追随せず、レンゴーだけが価格で苦戦した揚げ句にシェアを落としたのである。
価格の正常化を含めて、レンゴー主導による意識改革は、業界に一定の秩序や安定をもたらしたと考えられていた。大坪会長にとっては痛恨の極みである。これから意識改革をさらに一歩進めようと動いていた矢先に、いつか来た道に戻ってしまったからだ。
◎誰にとっての「価格の正常化」?
「価格の正常化」という表現が引っかかった。価格競争を控え足並みを揃えて値上げすることが「価格の正常化」だと池冨記者は思っているようだ。レンゴーにとってはそうかもしれない。だが、池冨記者はレンゴーの利益代弁者ではないはずだ。
甘木公園の噴水(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係 |
自由競争を是とする立場で考えれば、自由競争の下で需給に基づいて価格が決まるのが「正常」であり、最大手のメーカーが業界に呼びかけて価格競争を抑制しているような状態の方があるべき姿から離れている。
自由競争の下で激しい価格競争が起きている状態から、業界が仲良く協調して総コストに一定の利潤を上乗せした価格で販売する状態に移行したら「価格の正常化」が進んだと言えるのか。社会全体にとって、価格はどう決まるのが「正常」なのか。池冨記者にはもう一度考えてほしい。
最後に、インタビュー記事の一部を紹介したい。経営者を持ち上げるような質問が引っかかった。
【ダイヤモンドの記事】
──ところで、社内には「読書家で勉強家の大坪会長には、議論で敵(かな)わない」という声があります。
いやいや。日進月歩で進化する世の中への対応を考えて、必死になっているだけですよ(苦笑)。
◎経営者ヨイショが当たり前?
池冨記者にとっては経営者をヨイショするのが当たり前なのか。「社内には『読書家で勉強家の大坪会長には、議論で敵(かな)わない』という声があります」と取材の時に聞くのはいい。それで相手が気分良く話してくれれば儲けものだ。だが、記事にも入れてしまう気が知れない。自分だったら「あまりにヨイショ丸出しで恥ずかしい」と思ってしまう。池冨記者にはそういう感覚はなさそうだが…。
※今回取り上げた特集「100年以上前から段ボールと歩む レンゴー 業界リーダーの矜持と危機感」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/23219
※記事の評価はD(問題あり)。池冨仁記者への評価はDで確定とする。池冨記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「王子・三菱製紙の提携」週刊ダイヤモンドも記事に問題あり
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/02/blog-post_18.html
記事の文章だけで判断してて業界の構造や価格体系を理解していない論調としか思えない
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