2018年4月16日月曜日

「男女の二項対立」を散々煽ってきた水無田気流氏が変節?

詩人・社会学者の水無田気流氏は悪い意味で自由過ぎる書き手だ。16日の日本経済新聞朝刊女性面に載った「ダイバーシティ進化論~『フェミニスト』男性も名乗り 短絡的イメージを払拭」という記事で、これまでの自分の主張を忘れたかのような見解を披露していた。 まずは記事の最初の方を見ていこう。
佐世保港(長崎県佐世保市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

大学でジェンダー論を教えていると、よく直面する誤解に「フェミニズムは男性・男社会=悪という前提のもと、女性が男性に異議申し立てする思想運動」だとの認識がある。

この基底には「男性対女性」の短絡的な二項対立図式がある。例えば2月、都内で女性専用車両に「男性差別」と男性が乗り込み、遅延を招いて話題になった。その運動を起こした男性も、その場で退出を要請した女性たちの対応も、さらにはそれらに対する感情的な反応なども、俯瞰(ふかん)すれば、男女の二項対立が前提といえる

同事件には、背景にある性犯罪や性被害の実態のほか、都市部の公共交通機関の現状など幾重にも検討すべき社会問題がある。ところが問題を単なる男女の対立図式に落とし込んでしまうと、それらの諸相をはぎ取る危険性をはらむ


◎「男女の二項対立」を煽ってきたのは自分では?

これだけ読むと、水無田氏は「男女の二項対立」として物事を捉えることに否定的だと思える。しかし、過去に訴えてきた内容の多くは「男女の二項対立」を煽るものだった。

2016年12月30日の日経女性面に載った「女・男 ギャップを斬る~共働き社会 追いつかぬ政策 平日の子連れパパ 定着を/母に求める水準高すぎる」という記事(そもそも「女・男 ギャップを斬る」というタイトルが「男女の二項対立」を前提としている感じもある)の中で水無田氏は以下のように述べている。

私も子どもが生まれたときは非常勤講師だったので、預け先探しに苦労した。専門学校の夜間講義の日は公営の一時保育に預け、午後9時に授業が終わると迎えに飛んで行き、寝ている息子を引き取りタクシーで帰る。託児コストで講義報酬の半分近くが消えた。両立のコストを女性だけが担っている。社会構造の問題だ

育児のコストは男性も負っているので「両立のコストを女性だけが担っている」という認識がまず間違っている。さらに言えば水無田氏の話はあくまで家庭内の問題で「社会構造の問題」とは言い難い。それでも強引に「両立のコストを女性だけが担っている」と「男女の二項対立」の問題に持ち込んでしまう。

自らがそういう主張を繰り返しておきながら、女性専用車両に男性が乗り込んだ件を見て「この基底には『男性対女性』の短絡的な二項対立図式がある」「問題を単なる男女の対立図式に落とし込んでしまうと、それらの諸相をはぎ取る危険性をはらむ」と訴えても説得力はない。「そう言う自分は『男性対女性』の二項対立図式で物事を捉えてこなかったのか」と自問してほしい。

男女平等の観点から考えれば、現状の女性専用車両は明らかな男性差別だ。女性専用車両がどうしても必要ならば男性専用車両も用意すれば済む。技術的にもコスト的にも難しくない。

その辺りは水無田氏も理解しているかもしれない。だから「問題を単なる男女の対立図式に落とし込んでしまうと、それらの諸相をはぎ取る危険性をはらむ」などと書いてごまかしていると考えると納得できる。

水無田氏は今年1月18日の「ダイバーシティ進化論『外圧』と『横紙破り』でしか変わらない日本」という記事では「熊本市議の子連れ登院」に触れて「それでも壁があると指摘したければ、人は表層的には平穏な『空気』を引き裂くため、横紙破りに走らざるを得ない。忖度文化社会を変えるには、外圧と横紙破りが最も効力を発するからだ」と述べていた。つまり熊本の女性市議の行動を擁護していた。

だったら、仮に女性専用車両に男性が乗り込む行為が「横紙破り」であっても、男性差別をなくそうとする男性を応援してくれても良さそうなものだ。ところが、そうはならず「二項対立図式」はダメだという話に持って行ってしまう。これではご都合主義と言われても仕方がない。


※今回取り上げた記事「ダイバーシティ進化論~『フェミニスト』男性も名乗り  短絡的イメージを払拭
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180416&ng=DGKKZO29354380T10C18A4TY5000


※記事の評価はD(問題あり)。水無田気流氏への評価もDを据え置く。水無田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経女性面「34歳までに2人出産を政府が推奨」は事実?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/34.html

日経女性面に自由過ぎるコラムを書く水無田気流氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_5.html

日経女性面で誤った認識を垂れ流す水無田気流氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_30.html

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