佐世保港(長崎県佐世保市市)※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
職場にダイバーシティーが必要か。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)が昨年、さまざまな企業の管理職を対象に調査したところ、本部長クラスでは6割以上が必要と回答。しかし部長級だと5割台に減り、課長級では半分を切った。
現場に近い層ほど疑問視しているわけだ。「仕事が進まない」「成績向上に直結しない」「コミュニケーションの阻害になる」。不要派や態度保留派の回答には容赦ない本音が並ぶ。
経済産業省が昨年まとめたダイバーシティーの現状に関する報告書も「企業の立場からすると『女性活躍』を進めるべきとの政府や社会からの要請に対し、受動的に対応を迫られたという側面も否定できない」と指摘。短期的には企業価値を下げる点にも言及する。
働く人の多様化は成長戦略の柱だったはず。ボタンの掛け違いは、異質な人材が混在し、のびのび振る舞ってこそイノベーションが生まれる点を忘れたことが原因ではないか。米グーグルは、自社内で生産性の高いチームは個性や異論、個人的事情を仲間にさらけ出せる「心理的安全性」を備えた集団だったとの研究結果を発表している。
◎結局、推進すべき根拠はない?
「日本には経済成長が必要で、そのためにはダイバーシティーの推進が欠かせない」と石鍋編集委員は考えているのだろう。記事中で「働く人の多様化は成長戦略の柱だったはず」「異質な人材が混在し、のびのび振る舞ってこそイノベーションが生まれる」などと述べている。
だが「ダイバーシティーを推進→イノベーションが起きて経済成長につながる」という因果関係に根拠らしきものが見当たらない。
「経済産業省が昨年まとめたダイバーシティーの現状に関する報告書」は「女性活躍」が「短期的には企業価値を下げる点にも言及する」らしい。ならば、長期的には企業価値を上げるという根拠はあるのか。あれば石鍋編集委員は喜んで飛び付きそうなので、ないと推測できる。
さらには「異質な人材が混在し、のびのび振る舞ってこそイノベーションが生まれる」とも言い切っている。もちろん何の根拠も示していない。
グーグルの「研究結果」の話はさらに厳しい。まず「生産性」の話なので「イノベーションが生まれる」かどうかと直接の関係はない。「個性や異論、個人的事情を仲間にさらけ出せる『心理的安全性』を備えた集団」の「生産性」が高くなるとしても、その「集団」が多様性を備えている必要があるとは言っていない。
常識的に考えれば、同質性が高い集団の方が「個人的事情を仲間にさらけ出せる『心理的安全性』」は高いだろう。同じ年齢で同性ばかり日本人だけのチームで作業する時と、年齢はバラバラで男女半々で全員の国籍が異なるチームで作業する時では、どちらがチーム内で「個人的事情」をさらけ出しやすいか、石鍋編集委員にも考えてみてほしい。
基本的に「多様性を高めればパフォーマンス面でプラスの効果が見込める」という話は怪しいと思う。せいぜい「プラスの効果が見込める場合もなくはない」といった程度だろう。
極端なケースを考えてみれば分かる。60歳定年制で従業員は全員が50代以下というIT企業がダイバーシティー推進のために社員の30%を60代以上にして、さらに社員の10%以上は80代以上にしたらどうなるだろうか。「働く人の多様化」でイノベーションが次々に起きて企業は大きく成長するだろうか。
「異質な人材が混在し、のびのび振る舞ってこそイノベーションが生まれる」というのは、石鍋編集委員の信仰にも似た思い込みではないのか。「違う」と言うのならば、明確なエビデンスを示してほしい。
※今回取り上げた記事「経営の視点~ダイバーシティーへの本音 不要論より個性取り込め」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180326&ng=DGKKZO28500270T20C18A3TJC000
※記事の評価はD(問題あり)。石鍋仁美編集委員への評価はDを据え置く。石鍋編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「シェアリング」 日経 石鍋仁美編集委員の定義に抱いた疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_88.html
どこに「自己否定」? 日経 石鍋仁美編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_31.html
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