2018年3月25日日曜日

「麻生氏ヨイショ」が苦しい日経 上杉素直編集委員「風見鶏」

ヨイショ記事は好きではないが、「ヨイショだからダメ」と決め付けるつもりはない。ヨイショするに足る十分な材料があれば問題ない。だが、25日の日本経済新聞朝刊総合3面に載った「風見鶏~麻生氏不在の存在感」という記事は、肝心の「材料」が弱すぎる。そうなると単なる「筋の悪いヨイショ記事」だ。
横浜銀行本店(横浜市)※写真と本文は無関係です

筆者の上杉素直編集委員は記事の後半で以下のように記している。

【日経の記事】

近年際立つ特徴は、G7とG20を通じて最も早い年初のG20財務相・中央銀行総裁会議がその1年の国際社会のテーマを方向付ける役割だ。市場の動揺を受けた2016年2月の上海での会合は「政策総動員」を打ち出し、金融政策だけでなく財政や経済構造の改革に取り組むと強調。「政策総動員」が16年を通じたキーワードになった。

ドイツ南西部のバーデンバーデンで開いた17年3月の会合は、米国第一を掲げる米トランプ政権を国際社会が迎える場でもあった。「保護主義に対抗」という定例表現を米国の主張で削除せざるを得なかった共同声明が衝撃的だった。議長国のドイツをはじめとする参加者に米国へのいら立ちが充満していた。

異様なムードの会議で米国に寄り添う姿勢が目立ったのが麻生氏。「『毎回同じこと言うな』って言って、次のとき言わなかったら『なんで言わないんだ』という程度のもの」。独特の言い回しで反保護主義の文言削除をめぐる騒ぎを一蹴した。G20会議に併せてムニューシン米財務長官と個別に会い、米国を迎え入れる窓口役を買って出ているようにも映った。

米国の鉄鋼輸入制限の発動が迫るタイミングに重なった18年最初のG20財務相会議は20日(日本時間21日)、アルゼンチンのブエノスアイレスで幕を閉じた。通商政策の担当ではない財務相が集まっても通商が最大のテーマになるよじれ。米国は自国中心の強気を崩さず、トランプ時代の国際協調は18年も山あり谷ありだと予感させた。

今回、欧州や新興国が米国との窓口役を期待したであろう麻生氏の姿はブエノスアイレスになかった。G20会議がヤマ場を迎えた頃に麻生氏がいたのは日本の国会だ。学校法人「森友学園」に関する決裁文書を財務省が書き換えた問題にまつわる疑問は尽きず、麻生氏の責任と進退を問う声が次々と上がっている。

不在がむしろ存在感を示すことがある。ブエノスアイレスでそう感じたG20会議の出席者もいただろう。森友問題の収拾のため、麻生氏辞任の可能性を想像するときに政権関係者が感じるのと同じように。


◎「米国に寄り添った」だけなら…

今回の記事のテーマは「麻生氏不在の存在感」だ。「18年最初のG20財務相会議」を麻生氏が欠席したことを取り上げて「不在がむしろ存在感を示すことがある」と持ち上げている。

それまで麻生氏が「G20会議」で存在感を示していたのならば、上杉編集委員の解説に説得力が出てくる。しかし、記事を最後まで読んでも、そう納得できる「材料」は出てこない。

まず「16年」に関しては、麻生氏と関連付けていない。「17年3月の会合」でようやく麻生氏が登場するが、「異様なムードの会議で米国に寄り添う姿勢が目立ったのが麻生氏」だと言う。日本が「米国に寄り添う」のはお決まりのパターンで、特筆すべきものでもない。

例えば、米国と他国の意見が対立する中で、麻生氏が積極的に調整役を買って出て合意形成に大きな役割を果たしたといった話があれば、翌年の「G20会議」で「麻生氏不在の存在感」が出てくるとの解説もうなずける。だが、お決まりの米国追従の姿勢を見せた程度で、麻生氏個人の存在感が高まるとは考えにくい。

しかも、記事では「不在がむしろ存在感を示すことがある。ブエノスアイレスでそう感じたG20会議の出席者もいただろう」と書いている。「麻生氏不在の存在感」があったとは断定していない。「そう感じたG20会議の出席者もいただろう」と上杉編集委員が想像しているだけだ。これは苦しい。

18年最初のG20財務相会議は20日(日本時間21日)、アルゼンチンのブエノスアイレスで幕を閉じた」のだから、日本の関係者でもいいので取材して「麻生氏不在の存在感」があったかどうかを聞くべきだ。

例えば「海外メディアからも『ミスター麻生はなぜいないんだ。彼がいないと会議がまとまらない』といった質問をたくさん受けた」という政府関係者のコメントが記事に入っていれば、「麻生氏不在の存在感」をしっかり裏付けられる。

そうした取材を上杉編集委員は怠ったのか、やってみたものの期待通りの結果が得られず「ごまかし」に走ったのか。いずれにしても問題ありだ。


※今回取り上げた記事「風見鶏~麻生氏不在の存在感
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180325&ng=DGKKZO28482950T20C18A3EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。上杉素直編集委員への評価はDで確定とする。

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