平塚川添遺跡(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です |
まずは関係する部分を見ていこう。
【日経の記事】
コマツが画像処理半導体(GPU)の世界首位、米エヌビディアとの協業を決めた。エヌビディアが得意とする大量のデータの高速処理技術を使い、人工知能(AI)で建設現場の作業効率を上げる。建設会社の生産性向上を支援する新しいビジネスモデルづくりをめざしている。
すでにコマツはドローン(小型無人機)で工事現場を測量して、掘削する土の量をもとに工事に要する日数を計算するなどのサービスを始めている。AI活用はその深化が狙いだ。
ドローンで撮った写真を3次元データにするまでの時間が、これまでの10~12時間から20分に大幅短縮。刻々と変わる現場の様子の「見える化」が進み、施工計画の修正に役立つ。
現場で待機しているだけのダンプカーも把握でき、待ち時間の削減に手を打てる。「(必要なときにダンプを手配する)シェアリングサービスも視野にある」と四家千佳史・執行役員スマートコンストラクション推進本部長は話す。
建機が急に土を掘りにくくなったとき、運転席のカメラが撮影した画像からAIが地質を分析して、「バケット(土をかき出すカゴ)を3度浅く入れて下さい」などと音声で指示することも可能になるという。
高齢化で建設業界は今後、人手不足がより深刻になりそうだ。建設会社は効率経営を一段と迫られる。コマツがそのノウハウの提供に力を入れるのは、顧客である建設会社との「共存共栄」のためだ。
コマツの姿は、フランチャイズチェーン(FC)契約を結んだ加盟店との間に情報網を築き、在庫管理や消費者の変化に応じた品ぞろえなど店舗運営を支援するセブン―イレブン・ジャパンと重なる。
加盟店からロイヤルティー収入を得るセブンイレブンに対し、いまコマツは建設会社への支援料を建機の価格に上乗せしている。どんな形で対価を受け取るのがいいか模索している段階だが、めざすビジネスモデルは経営ノウハウを売って利益を得る点で、セブンイレブンと同じといえる。
◇ ◇ ◇
気になった点を挙げてみる。
◎なぜ「セブンイレブン」限定?
百歩譲って、コマツの「めざすビジネスモデル」がFCチェーン的なものだとしよう。だが、数あるFCチェーンの中で「セブン―イレブン・ジャパンと重なる」「セブンイレブンと同じといえる」などとセブンイレブンだけをなぜ抜き出したのか、記事には説明がない。
キリンビール福岡工場(朝倉市)のコスモス ※写真と本文は無関係です |
他のコンビニも基本はFCだし、飲食チェーンなどにもFCはたくさんある。「加盟店との間に情報網を築き、在庫管理や消費者の変化に応じた品ぞろえなど店舗運営を支援する」のは、どのチェーンもほぼ共通する。単にFC的と言うだけなら「コマツは『ローソン』に変身する」でも成り立つ。セブンイレブンという特定企業に「重なる」と言うのであれば、セブンイレブンにしかない特徴との共通点が欲しい。
◎コマツは「経営ノウハウ」を売る?
コマツに建設会社経営のノウハウがあって、それを「売って利益を得る」のならば、FCチェーンと似ていると言えなくもない。しかし、記事を読む限りでは、コマツがやろうとしているのはAIを使った情報提供サービスだ。「経営ノウハウ」とは違う気がする。
建機を使っている時、運転者に「バケットを3度浅く入れて下さい」と助言するサービスは「経営ノウハウ」を売っていると言えるだろうか。例えば、航空機メーカーが運転中のパイロットにAIを使って様々な注意喚起をするサービスを始めたとしよう。その場合、航空機メーカーは航空会社に「経営ノウハウ」を売っているのか。
そう考えると、やはりコマツの「めざすビジネスモデル」はFC的ではないし、FCの中で「セブンイレブン」と重ねる必要はさらに乏しい。
※今回取り上げた記事「経営の視点~コマツは『セブン』に変身する 製造業の進化、AIで」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180101&ng=DGKKZO25275760R31C17A2TJC000
※記事の評価はD(問題あり)。水野裕司編集委員への評価もDを据え置く。水野編集委員については以下の投稿も参照してほしい。
通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_28.html
通年採用で疲弊回避? 日経 水野裕司編集委員に問う(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_22.html
宣伝臭さ丸出し 日経 水野裕司編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_26.html
「脱時間給」擁護の主張が苦しい日経 水野裕司編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_29.html
0 件のコメント:
コメントを投稿