2017年10月11日水曜日

週刊ダイヤモンド鈴木洋子記者のヨイショ記事に注文

企業のヨイショ記事を書くなとは言わない。しかし、書くのならば「ヨイショに値する」と言える販売の好調さなどをきちんと見せてほしい。週刊ダイヤモンド10月14日号の「 Inside ~高級機種を“一掃”するか アイリスオーヤマの炊飯器」という記事では、それができていない。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

まず最初の段落を見てみよう。

【ダイヤモンドの記事】

家庭日用品メーカーのアイリスオーヤマが、「家電メーカー」として業界に殴り込みをかけている。今回の標的は炊飯器だ。昨年初めて発売した炊飯器が予想外に売れ家電関係者も“ダークホース”と警戒している。今年は昨年の3機種から一気に品ぞろえを拡大、計9機種を年末商戦に向け投入する。


◎具体的な売り上げは?

アイリスオーヤマの炊飯器がよく売れているという前提で記事を書いているものの、具体的な売上高は見当たらない。記事の最後の方に「今期の家電事業の売上高は730億円に達し~」とは出てくるが、「炊飯器」の数字ではない。「予想外に売れ、家電関係者も“ダークホース”と警戒している」と言うだけでは苦しい。誰の「予想」なのかも不明だ。

筆者の鈴木洋子記者がデータを持っているのならば記事に反映させるべきだし、データが得られなかったのならば「本当に好調なのかな?」と疑ってほしい。

アイリスオーヤマの強さに触れた部分にも問題を感じた。

【ダイヤモンドの記事】

同社が注目されるのは、低価格ながら通常は高級炊飯器にしかない機能を搭載しているからだ。

(中略)銘柄炊き機能は、通常では5万円以上の高級機種にしか付いていないのが業界の常識だった。3万円台の炊飯器にこうした機能を搭載できるのはなぜか。

まず同社が社内に精米事業部門を持ち、コメについての研究結果や知見が蓄積されているからだ。

もう一つが、同社の独特な商品開発手法にある。アイリスオーヤマ家電事業部の石垣達也統括事業部長は、「最初に店頭販売価格を決め、そこから導き出した原価の範囲で消費者にニーズが高く、現状の競合品にはない機能を絞り込む。いわば“引き算”の開発を行っている」と明かす。

例えば、近年高価格化が進む炊飯器だが、コストの多くがどんどん厚くなっている「釜」に集中している。一方で、消費者や量販店店員を対象としたテストでは、高級炊飯器が炊き上がりで高得点になるとは限らない、という結果が出ている。

釜を厚くし過ぎても意味はない。炊飯器全体のバランスを取ることが重要」(石垣部長)と、「釜」へのコストを削った結果、他社にない機能を盛り込むことができた


◎「釜の厚さ」以外は関係薄いような…

炊飯器の高価格化の原因は「」が厚くなっているからで、「釜を厚くし過ぎても意味はない」とすれば、「」のコストを抑えるだけで性能を落とさずに低価格化できる。本当に「意味はない」か怪しい気もするが、「低価格ながら通常は高級炊飯器にしかない機能を搭載している」理由の説明としては、これだけで十分だ。
九州北部豪雨後の筑後川(福岡県朝倉市)
    ※写真と本文は無関係です

コメについての研究結果や知見が蓄積されている」ことが直接的に低コスト化につながる訳ではないし、他のメーカーが「研究結果や知見」を蓄積していないとも考えにくい。

独特な商品開発手法」にも無理がある。「最初に店頭販売価格を決め、そこから導き出した原価の範囲で消費者にニーズが高く、現状の競合品にはない機能を絞り込む。いわば“引き算”の開発を行っている」としても、「独特」だとは思えない。むしろ、ありがちだ。「どのぐらいの価格で市場に出すのか」「他社とはどう差を付けるのか」を考えずに開発する方が珍しいだろう。

高めの価格にするならば、他社よりも付加価値を高める「足し算」になるし、低価格を追求するならば「引き算」になる。当たり前の話だ。

ついでに言うと「他社にない機能を盛り込むことができた」との説明もおかしい。「銘柄炊き機能」については、記事中で「通常では5万円以上の高級機種にしか付いていない」と書いている。つまり「他社にもある機能」だ。「3万円台の機種では他社にない機能」と言いたかったのかもしれないが、そうは書いていない。

最後の段落に移ろう。ここにも具体的数値の欠如が見られる。

【ダイヤモンドの記事】

すでに今期の家電事業の売上高は730億円に達し、規模では炊飯器大手の象印マホービンと並ぶほどに成長したアイリスオーヤマ。安かろう悪かろうではなく、自社の「十八番」と「引き算思考」を武器に、売上台数のシェアで「炊飯器メーカー」としてトップに躍り出る可能性が現実味を帯びてきている


◎具体的な今の「シェア」は?

売上台数のシェアで『炊飯器メーカー』としてトップに躍り出る可能性が現実味を帯びてきている」と鈴木記者は記事を締めているが、またしても具体的な数字はなし。アイリスオーヤマがどの程度のシェアを持っていて、直近でトップとどのぐらい離れているのかは最低でも欲しい。全く数字が見えない中で「現実味を帯びてきている」と言われても、説得力は乏しい。

ついでに言うと、今回の記事の見出しは「高級機種を“一掃”するか アイリスオーヤマの炊飯器」だった。この見出しを付けるならば、他社の「高級機種を“一掃”する」力がアイリスオーヤマにあるかどうかも論じるべきだ。これまた全く触れていない。


※今回取り上げた記事「 Inside ~高級機種を“一掃”するか アイリスオーヤマの炊飯器
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21501


※記事の評価はD(問題あり)。鈴木洋子記者への評価はDで確定とする。鈴木記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

ソニーの例えが下手な週刊ダイヤモンド鈴木洋子記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_19.html

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