2017年10月21日土曜日

我が振り直さず「32歳の仲暁子社長」を批判するFACTA

「人の振り見て我が振り直せ」とでも言えばいいのだろうか。FACTA11月号に載った「『ウォンテッドリー』が上場 日経が担ぐ『未熟な女社長』」という記事では、「ウォンテッドリーを率いる32歳の仲暁子社長」を「未熟な女社長」と呼び、「株主、主幹事証券、東証といった周りの大人たちも、32歳の仲暁子社長を持ち上げるだけでなく、しっかりとアドバイスすべきだ」と教えてくれている。だが、FACTAにそんなことを言う資格があるのか。
夜明大橋(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です

記事では「同社」の使い方に問題があったので、それと絡めて問い合わせを送っておいた。


【FACTAへの問い合わせ】

FACTA  主筆 阿部重夫様  発行人 宮嶋巌様  編集人 宮崎知己様

御誌を定期購読している鹿毛と申します。

11月号の「『ウォンテッドリー』が上場 日経が担ぐ『未熟な女社長』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

この時、日経以外のメディアの露出が少なかったのには訳がある。取材が決まっていた複数のメディアによれば『DMCA問題について質問するのであれば取材は受けない』との通達が同社からあったそうである。実は日経新聞は同社の株主(1.17%)であり15年6月に資本業務提携を行っている

記事によれば「取材は受けない」との通達をしたのは「同社=日経」となっています。しかし、文脈から考えて、通達をしたのは「ウォンテッドリー」のはずです。また、日経新聞が「同社=日経新聞」の株主であり、日経が「同社=日経新聞」と「資本業務提携を行っている」との説明は意味不明です。ここも日経新聞が株主となっているのは「同社=日経新聞」ではなく「ウォンテッドリー」ではありませんか。ウォンテッドリーへの日経の出資比率は実際に1.17%のようです。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。少なくとも「同社」の使い方に拙さがあると思えます。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
有朋の里 泗水・孔子公園(熊本県菊池市)
            ※写真と本文は無関係です

今回の件は大きな問題ではないかもしれません。それでも敢えて問い合わせしたのは、記事でウォンテッドリーの仲暁子社長を批判的に取り上げた上で、以下のように記していたからです。

著名な株主との交流を誇るのもいいが、上場して社会の公器となった今、市場の規律への配慮、従業員、ユーザへの目線などがより一層必要となろう。仲は証券会社出身でもあり上場の重みも理解すべきだ。ちなみに仲は本誌の文書による質問(なぜ、上場記者会見をキャンセルしたのか)にも一切答えなかった

御誌では読者からの間違い指摘を当たり前のように無視しています。なので「仲は本誌の文書による質問にも一切答えなかった」などと仲社長の対応を批判的に描く資格はありません。定期購読している読者からの間違い指摘を平気で無視する雑誌が「ユーザへの目線などがより一層必要となろう」と説いて説得力がありますか。

記事では「株主、主幹事証券、東証といった周りの大人たちも、仲を持ち上げるだけでなく、しっかりとアドバイスすべきだ」とも記しています。しかし、アドバイスをしっかり受け止めて改善を図るべきなのは御誌の方です。改めて次の言葉を阿部様、宮嶋様、宮崎様に贈ります。

「狭き門より入れ。滅びに至る門は大きくその路は広い」

間違い指摘の無視は、長い目で見ればメディアとしての自殺行為です。それでも阿部様、宮嶋様、宮崎様は「滅びに至る門」を選びますか。

最後に、9月24日に送った問い合わせの内容を記しておきます。10月1日に回答を求めるメールを改めて送らせていただきましたが、最初の問い合わせから1カ月近くが経過しても何の音沙汰もありません。

【問い合わせの内容(9月24日送信分)】

大西康之様 FACTA編集部 担当者様

御誌を定期購読している鹿毛と申します。

10月号の「東芝『日米韓連合』逆転の真相」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは、7月5日の経産省人事に関する記述です。10月号では以下のように記しています。
八女学院(福岡県八女市) ※写真と本文は無関係です

7月5日、経産省で大きな人事異動があった。東芝再建の窓口である商務情報政策局の局長には、安藤久佳に代わり貿易経済協力局長だった寺澤達也が就任した。同時に東芝問題を担当していた情報通信機器課は情報産業課に改組され、課長も三浦章豪から成田達治に代えられた。通常、中央官庁の人事では、仕事の継続性を考え、重要案件を担う部署の局長と課長が同時に代わることはない。局長、課長セットでの交代には東芝問題に対する世耕弘成経産相の苛立ちが透けて見える。『とにかくメモリ事業を早く売らせて東芝本体を守れ』とのお達しである

これを信じれば、7月5日の人事は経産省が東芝本体を守る姿勢を鮮明にしたものと言えます。ところが8月号の「東芝弄んだ『経産の大ワル』」では全く異なる解説になっています。記事の最後で大西様は以下のように記事を締めています。

しかし経産省による東芝救済はついにデッドロックに乗り上げた。7月の経産省人事を見れば一目瞭然。安藤は外局の中小企業庁長官、ターゲティング派の頭目とされた経産政策局長の柳瀬唯夫は経産審議官に棚上げされ、次官の目はほぼ消えた。ターゲティング派に黄昏が迫る。庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう

ここでは7月5日の人事を「ターゲティング派に黄昏が迫る」動きと捉え、「庇護を受けられなくなった東芝」の救済の道が絶たれつつあると結論付けています。同じ日付の人事を同じ筆者が解説しているのに、正反対とも言える分析です。

10月号では「『もう時間切れ。政府は東芝メモリの売却を諦め、別の方法で東芝本体に金を入れる方法を考え始めた』(金融関係者)」「そうまでして政府が東芝本体の救済にこだわるのは『原発推進』という国策を堅持する上で東芝が必要不可欠な『手駒』であり、『防衛産業』という裏の顔を持つからだ」との記述もあります。これも「庇護を受けられなくなった東芝には、応分の沙汰が下ることだろう」という8月号の解説と整合しません。

8月号と10月号の説明は矛盾していると考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。8月号の分析が間違っていたので10月号で修正を図ったと見るのが自然だとは思います。その場合、8月号の解説に問題があったことを10月号の記事で読者に伝えるべきです。

お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「『ウォンテッドリー』が上場 日経が担ぐ『未熟な女社長』

※記事の評価はD(問題あり)。FACTAが間違い指摘にきちんと回答しない問題については以下の投稿を参照してほしい。

記事の誤りに「説明なし」 宮嶋巌FACTA編集長へ贈る言葉
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/facta.html

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