2017年9月27日水曜日

「脱時間給」推進と矛盾する日経社説「学校現場の疲弊を防ぐには」

27日の日本経済新聞朝刊総合1面に「学校現場の疲弊を防ぐには」という社説が載っている。これ自体に大きな問題はない。ただ、「脱時間給」制度の導入を熱心に訴えてきた従来の主張とは矛盾を感じる。まず、「ブラック企業まがいの長時間労働の実態を重く受け止め、教員の働き方改革を進めてほしい」と求める社説の一部を見ていこう。
筑陽学園高校(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

【日経の社説(9月27日)】

公立校の教員の時間外労働の割増賃金は労働基準法の対象外だ。「教職員の給与に関する特例法」は、「残業代や休日出勤手当を支給しない」と定める。一方で、給与額の4%を実質的な超勤報酬として一律に支給する。時間管理は不要、との慣習を生む一因だ。

同法は、40年以上前の教員の勤務実態を参考に施行された。近年の多忙な学校職場の実態にそぐわない。文科省は、部活動休養日の導入、外部の部活指導員や事務専門職員の配置など、当面の緊急対策を打ち出した。だが、今後は同法の見直しも検討課題となろう


◎「脱時間給」に近い制度のような…

公立校の教員」に「残業代や休日出勤手当を支給しない」のは、日経が導入を強く訴えてきた「脱時間給」に近いやり方だ。だが、「時間管理は不要、との慣習を生む一因」になっているとして、「教職員の給与に関する特例法」の見直しも検討するよう求めている。これは苦しい。日経の従来の主張を確認するために「政労使合意なくても労基法改正を確実に」という社説を見てみよう。

【日経の社説(7月28日)】

経済のソフト化・サービス化が進み、成果が働いた時間に比例しない仕事が増えている現実がある。働く時間が長いほど生産が増える工場労働なら時間に応じて賃金を払うことが合理的だが、企画力や独創性が問われるホワイトカラーにはそぐわない。成果重視を前面に出すことで、脱時間給は働く人の生産性向上を促せる。

脱時間給は長時間労働を招きかねず、残業を規制する動きと矛盾する、とも指摘される。だが新制度では本人が工夫して効率的に働けば、仕事の時間を短縮できる。その利点に目を向けるべきだ。


◎教員も「ホワイトカラー」では?

働く時間が長いほど生産が増える工場労働なら時間に応じて賃金を払うことが合理的だが、企画力や独創性が問われるホワイトカラーにはそぐわない」と言うのならば、教員にも「脱時間給」が合っているはずだ。教員は「企画力や独創性が問われるホワイトカラー」に含めてもよいだろう。
鳥栖プレミアム・アウトレット(佐賀県鳥栖市)
        ※写真と本文は無関係です

成果重視を前面に出すことで、脱時間給は働く人の生産性向上を促せる」のだから、教員に関しても、「残業代や休日出勤手当を支給しない」やり方は温存して「成果重視を前面に出す」ように求めるのが自然だ。

例えば、顧問を務める部活動が全国大会などに出場したらボーナスを上積みするといった方法が考えられる。過重労働を助長しそうな気もするが、日経の従来の立場で言えば心配は要らない。「本人が工夫して効率的に働けば、仕事の時間を短縮できる」のだから。

しかし、なぜか「ブラック企業まがいの長時間労働の実態を重く受け止め、教員の働き方改革を進めてほしい」と社説で書いてしまう。これは「脱時間給」制度が「ブラック企業まがいの長時間労働」を招きやすいと日経自身が認めてしまったようなものだ。


※今回取り上げた社説「学校現場の疲弊を防ぐには

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170927&ng=DGKKZO21574080W7A920C1EA1000

※27日の社説の評価はC(平均的)。

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