2017年9月22日金曜日

テクニカル分析は必要? 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」

週刊ダイヤモンド9月23日号の特集「株&投信 超理解」には、「Part 3~丸分かり『株投資』入門」の最初に「知らなきゃ大損!? 株投資の基本 売買の王道手法を徹底解説」という記事が載っている。「基本中の基本について解説していこう」と言うのでどんな話かと思ったらテクニカル分析の1つを「初心者に最も分かりやすくかつシンプル」だと紹介している。個人的にテクニカル分析の有効性を信じていないからでもあるが、テクニカル分析を「初心者」に勧めるのは感心しない。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

記事では以下のように書いている。

【ダイヤモンドの記事】

相場全体の変遷をつかんだら、次は売買のタイミングだ。それを探る上で、初心者に最も分かりやすくかつシンプルなのが、「グランビルの法則」だろう。値動きのデータを基にした「テクニカル分析」の王道とされ、米投資家が編み出した法則だ。

下図は、投資家に人気で売買高が大きい、三菱UFJフィナンシャル・グループの株価の推移を基にして、この法則の概要を示したものだ。

ここでは、「200日移動平均線」の見方を学んでおこう。これは、過去200日間の終値の平均値で、中長期の株価の方向性をつかむためのものだ。

この移動平均線を株価が上回りながら重なることを「ゴールデンクロス」と呼び、買いを入れるシグナル((3)、(6))になる。逆に移動平均線を下回りながら重なったら「デッドクロス」といい、売りのシグナル((1)、(5)、(7))と見なすわけだ。

さらに、移動平均線が上昇しているときに株価が一時的に下がり、すぐに上がり始めたら「押し目買い」((4))。移動平均線が下降しているときに、株価が一時的に上がり、すぐに下がり始めたら「戻り売り」((2))のシグナルと判断するのが基本的な取引の流れだ。

投資家で移動平均線を知らない人は皆無といってよく、売買のタイミングを見極める上でその多くが意識をしている。

そのため、移動平均線と株価が重なる局面では、値動きが大きくなりやすい。株価の急変動で売買のタイミングを逸しないように気を付けよう。

また、当然ながらこの法則は絶対的なものではない。法則上、押し目買いのシグナルが出ていても、株価が下がり続けてしまうようなケースはざらにある。

あくまで売買のタイミングを探る上での、一つの材料でしかないことを肝に銘じておこう。


◎そんなに「分かりやすい」?

テクニカル分析については有効性が証明されていないと思っている。これは特別な見方ではないはずだ。取材班は違う考えなのだろうし、それはそれでいい。だが「初心者」にテクニカル分析を「基本中の基本」として教えるのならば、テクニカル分析に有効性が認められる根拠を示してほしい。もしあればの話ではあるが…。
豪雨で流された夜明橋(大分県日田市の大肥川)
           ※写真と本文は無関係です

さらに言うと、「分かりやすくかつシンプル」かなとも思う。記事で紹介した「グランビルの法則」に従って投資すれば、市場平均を上回るリターンが継続的に得られるのならば、確かに「分かりやすくかつシンプル」だ。

しかし記事では「当然ながらこの法則は絶対的なものではない。法則上、押し目買いのシグナルが出ていても、株価が下がり続けてしまうようなケースはざらにある。あくまで売買のタイミングを探る上での、一つの材料でしかないことを肝に銘じておこう」と逃げも打っている。こうなると「初心者」がどうテクニカル分析を用いるべきか全く分からなくなる。せめて、どういう場合にテクニカル分析での「シグナル」を無視すべきかは解説すべきだ。

そもそも今回の特集では、長期の積み立て投資を推奨していたはずだ。投資初心者が長期手の積み立て投資を始める際に「基本中の基本」としてテクニカル分析を学ぶ意味があるのか。使えるとしても、長期投資の最初と最後だけだ。

編集後記に当たる「記者の目」で深澤献編集長は今回の特集を「『長期・分散・少額』をキーワードに、相場の短期的な動きに惑わされない投資の勧めです」と紹介している。だったら、なおさらテクニカル分析を学ぶ必要はないはずだ。

今回の特集は間違いが多いし、投資初心者に誤解を与える解説も目立った。深澤編集長を含め猛省を促したい。


※今回取り上げた記事「知らなきゃ大損!? 株投資の基本 売買の王道手法を徹底解説
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/21273


※記事の評価はD(問題あり)。特集全体の評価はE(大いに問題あり)とする。

特集の担当者への評価は以下の通り。

竹田幸平記者(暫定D→暫定E)
竹田孝洋記者(D→E)
中村正毅記者(暫定C→暫定E)
藤田章夫記者(暫定C→暫定E)


※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「最安の信託報酬」に誤り 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_18.html

 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」に2件目の間違い指摘
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_94.html

 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」に3件目の間違い指摘
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_86.html

 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」に4件目の間違い指摘
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_65.html

なぜ「少額」投資のススメ? 週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_21.html

比較が恣意的すぎる週刊ダイヤモンド「株&投信 超理解」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_39.html

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