豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です |
エコノミスト編集部に問い合わせを送ったので、その内容を紹介したい。
【エコノミストへの問い合わせ】
週刊エコノミスト編集部 担当者様
御誌を定期購読している鹿毛と申します。
8月8日号の「Jリート 売りに回る投信や金融機関 分配金利回り上昇で『買い時』」(筆者はアイビー総研代表の関大介氏)という記事についてお尋ねします。関氏はJリートに関して「投資に当たっては基本的に利回りが高い方が望ましいが、極端に株価が安い銘柄は、増資の際に『投資口の希薄化』が起きる可能性がある」と説明しています。これを信じれば「株価(投資口価格)が極端に安い銘柄でない限り、『投資口の希薄化』が起きる可能性はない」と読み取れます。しかし、全ての銘柄は増資の際に「投資口の希薄化」の可能性から逃れられないはずです。記事の説明は不正確であり、厳しく言えば誤りだと思えます。御誌の見解を教えてください。
さらに何点か指摘させていただきます。
上記の記述の後の「Jリートは不動産を取得するための資金調達を増資によって賄う」との説明も不正確です。銀行からの借り入れなどで資金調達する場合も当然にあります。記事からはJリートの資金調達手段が「増資」に限られているとの印象を受けます。「Jリートは不動産を取得するための資金調達を増資によって賄う場合もある」などとすべきではありませんか。
次は以下の記述についてです。
「J-REIT(日本版不動産投資信託、Jリート)の58銘柄すべての分配金利回りが上昇している。全銘柄の単純平均利回りは7月14日時点で4.7%。東証1部で最も配当利回りが高い日産自動車(4.6%)を上回る。Jリートの利回りは2013年2月以来の高水準にあり、配当の確保を狙う投資家にとっては『買い時』と言える状況だ」
まず、「配当の確保を狙う投資家」についでは「分配金の確保を狙う投資家」とすべきではありませんか。記事中で「分配金利回り」という表現を用いているのですから、当該部分で「配当」と言い換える理由はないはずです。読者を混乱させる書き方だと思えます。
「58銘柄すべての分配金利回りが上昇している」というのがいつと比べているのか不明なのも気になりました。記事を読み進めても謎は解けません。これは困ります。「全銘柄の単純平均利回り」の数字が「7月14日時点」なのも感心しません。1週間後の7月21日時点の数値を入れることはできたはずです。なるべく新しい数値を盛り込むように努力してください。
また、リートの投資口価格を「株価」と表記したことも良しとしません。記事の最初の方で「投資口価格(株価)」と書いてはいます。ただ、「投資口価格=株価」ではありません。「投資口価格(株式での株価に相当)」などとするのが妥当でしょう。記事では「Jリートの株価」という表現を繰り返し用いています。これには大きな違和感がありました。「投資口価格」が用語として分かりにくいとの判断であれば、最初だけ「投資口価格(株式での株価に相当)」と表記して、後は「Jリートの価格」などとすれば問題ないはずです。
記事の最後には「株価と資産のバランスを測る指標としては、PBR(株価÷1口当たり出資額、株価純資産倍率)が参考になる」との説明まで出てきます。ここは「PBR」ではなく「NAV倍率」という用語を用いた方が好ましいでしょう。リートに関しては「NAV倍率」という言葉が広く用いられているので、「PBR」で覚えてしまうと混乱の元です。「株式で言うPBRがリートではNAV倍率だ」と、きちんと解説してあげるのが読者のためだと思えます。
長くなりましたが以上です。今後の誌面作りの参考にしていただければ幸いです。お忙しいところ恐縮ですが「投資口の希薄化」については回答をお願いします。
◇ ◇ ◇
回答はたぶんないだろう。
※今回取り上げた記事「Jリート 売りに回る投信や金融機関 分配金利回り上昇で『買い時』」
※記事の評価はD(問題あり)。関大介アイビー総研代表への評価も暫定でDとする。
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