豪雨被害を受けた福岡県東峰村 ※写真と本文は無関係です |
記事の前半部分を見ていこう。
【日経の記事】
「経済制裁の影響? 半導体が高くなったことくらいかしら」
イランの首都テヘラン。シャリフ工科大学で人工知能(AI)を研究するショホーレ・キャサイ教授は事もなげだ。2009年、2人の息子を育てながらコンピューター工学分野で同国初の女性教授となった。
厳格なイスラム国家のイランでは外出時の服装など女性には多くの制約がある。学会もこれまでは男性中心だったが、AIの世界では男女の逆転が起きつつある。
イラン政府は16年、資源依存を脱し8%の経済成長をめざす計画を策定。柱の一つがAI産業だが、経済制裁の影響で国外の人材は集めにくい。光が当たったのが国内の女性だ。
理数系の国内最高峰、シャリフ工科大のコンピューター工学部で博士号を持つ学生の34%が女性。全学部平均より7ポイント高い。「最も優秀な女性がコンピューター工学部に集まるようになった」(キャサイ教授)ためだ。
◎「男女の逆転」はどこに?
「学会もこれまでは男性中心だったが、AIの世界では男女の逆転が起きつつある」と言うのならば、「学会」での「逆転」を見せてほしい。例えば「3年前まで学会のメンバーの8割は男性だったが、今はやっと5割を超える程度」と書いてあれば「男女の逆転が起きつつある」と納得できる。だが、「学会」に関して具体的なデータが出てこない。
九州北部豪雨後の二連水車(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です |
代わりの根拠のつもりなのか「シャリフ工科大のコンピューター工学部で博士号を持つ学生の34%が女性。全学部平均より7ポイント高い」という話が出てくる。しかし、これでは「男女の逆転が起きつつある」根拠にはなり得ない。まず「34%」では逆転に遠い。名称から判断すると「コンピューター工学部」はAIに特化した学部でもなさそうだ。それに「博士号を持つ学生の34%が女性」と書いているので「博士号を持っていない学生」に限れば、さらに数字は小さくなるのだろう。
ついでに言えば「博士号を持つ学生」というのも、よく分からなかった。「博士号」を取得した後もまだ学生を続けている人を指すのだろうが…。
さらに言うと、「経済制裁の影響? 半導体が高くなったことくらいかしら」とのコメントを使った後で「経済制裁の影響で国外の人材は集めにくい」と書くのも感心しない。「経済制裁の影響は半導体が高くなったことくらいじゃなかったの?」とツッコミを入れたくなる。
この記事は最後に出てくる事例も苦しい。
【日経の記事】
「AIでうちのサービスを改善できませんか」。都内のある大手企業の会議室で、青年が親ほどに年の離れた役員に囲まれていた。すがるような願いを聞き入れていたのは今林広樹氏。まだあどけなさの残る24歳だ。
今林氏は学生時代に独学で機械学習のスキルを身につけ、シリコンバレーで磨きをかけた。「海外ばかりがすごいわけじゃない」と設立した助言会社には大手企業からの依頼が舞い込む。
今林氏のようなフリーランスは「AIモンスター」と呼ばれる。多くは20代で受注額の相場は1カ月数百万円。月数件の案件を請け負うため、年間換算での受注額はざっと1億円にもなる。
性別に国家、そして世代。AIの進化がこれまでの常識とは違う逆転現象をもたらしている。
◎やはり見えない「逆転」
上記の事例では「これまでの常識とは違う逆転現象」が「世代」に関しても起きていると言いたいのだろう。だが、何の目新しさも感じない。AIのような分野では若い世代の方が有利だろうとは容易に想像できる。「24歳」が活躍するのは当然の流れだ。例えば「今林広樹氏」が80代で、そういう高齢の人材がどんどん出てきているのならば「これまでの常識とは違う逆転現象」と言えるだろう。
「今林氏のようなフリーランス」という書き方も引っかかった。「助言会社」を設立したのだから「フリーランス」というより経営者だ。いわゆる「法人成り」ならば、その点を明示すべきだ。会社として考えた場合、社員数にもよるが「年間換算での受注額はざっと1億円」だと大した金額ではない。
※今回取り上げた記事「AIと世界~見えてきた現実(3)イラン発女性の時代 常識を覆せるか」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170726&ng=DGKKASDZ10I7W_R10C17A7MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。「AIと世界~見えてきた現実」については以下の投稿も参照してほしい。
「ロボにも法的責任」が感じられない日経「AIと世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_86.html
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