浅井の一本桜(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
記事の一部を見てみよう。
【日経の記事】
幸子 ラップ口座で今、大きく伸びているのが「ファンドラップ」よ。複数の投資信託を組み合わせ、個人ごとに適した資産配分を目指すの。300万~500万円を最低投資額として申し込みを受け付ける金融機関が多いわ。
恵 手数料はどれくらいかかるの?
幸子 運用を任せることへの報酬と口座を管理する費用などをひとまとめにして、資産残高に一定率をかけた形で徴収されるわ。水準は各社で差があるけど、イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕社長は「報酬部分で年0.5%、口座管理部分で年1%、計年1.5%程度が平均でしょう」と教えてくれたわ。
恵 その水準なら、お得なのかしら?
幸子 そう考えるのは早いわ。ファンドラップのコストはほかにもあるのよ。金融機関に払う直接の手数料以外に、ラップ口座で投資した投信にかかる信託報酬などのコストが間接的に資産から差し引かれているわ。信託報酬は見た目にはわかりづらいけど、日々、資産から引かれていくから重要よ。吉井さんはラップ専用投信の信託報酬の水準を「平均で年1%程度」とみているわ。運用報酬や口座管理費と合計すると年2~3%になる計算ね。
満 そう聞くと高いね。
幸子 コストを帳消しにできる高い利益を上げ続けられるかによって評価は変わるけど、決して低いとはいえない水準ね。
◇ ◇ ◇
「そう聞くと高いね」「決して低いとはいえない水準ね」などと手数料の高さを明確に指摘しているのは好感が持てる。記事では「ロボットアドバイザー(ロボアド)」の解説もしているので、次はそのくだりを見てみよう。
【日経の記事】
恵 コンピューターで自動化するから低コストなのね。
幸子 2016年2月にサービスを始めたお金のデザイン(東京・港)のロボアド「THEO(テオ)」の手数料は最大年1.08%、同7月に参入した楽天証券「楽ラップ」は固定報酬型では最大年0.702%。いずれも投資単位は最低10万円からよ。ただ、ロボアドもこのコスト以外に投資対象の金融商品の間接コストがあるわ。
満 どれくらいなの?
幸子 テオの場合、投資対象は海外のETF(上場投資信託)で、運用中に「経費」と呼ぶコストが自動で差し引かれるわ。その水準は一般的な投信よりは低いのが普通だけど、運用中に変更されることも少なくないので「事前に数値を開示することは難しい」(お金のデザイン)そうよ。楽ラップは「組み入れる国内投信の間接コストも含めて1%未満を目標に運用する」としているけど、急激な相場変動などで一時的に上回る可能性がゼロではないわ。
◇ ◇ ◇
日経は「お金のデザイン」が大のお気に入りで何度も好意的に取り上げている。ただ、今回は少し様子が違っていた。全面的なダメ出しではないが、特に持ち上げるわけでもなく、問題点に重点を置いて紹介している。
西日本短期大学附属高校(福岡県八女市) ※写真と本文は無関係です |
中でも「経費」に関して「事前に数値を開示することは難しい」というコメントを使っているのは「お金のデザイン」の問題点を浮かび上がらせる上で効果的だ。間接コストを含めると手数料がどの程度になるのか説明する気がない会社側の姿勢が伝わってくる。
「事前に数値を開示することは難しい」のならば、実績でどの程度の「数値」になっているのかを「開示」してもいい。そもそもETFの信託報酬が大きく変動するとは考えにくい。正確なコストについて「事前に数値を開示することは難しい」としても、大まかな水準は示せるはずだ。その「開示」さえ拒むのであれば、「まともな投資家が相手にする必要のない会社」だと判断していい。
筆者である堀記者はそうした問題意識を持って記事を書いたのだろう。金融業界寄りの立場から高コストの投資商品を平気で持ち上げる記者が少なくない日経にあって、堀記者のような存在は貴重だ。
以前は問題のある記事も書いていたし、今回も「バランス型投信」を有力な選択肢として提示するなど引っかかる点もある。それを差し引いても、今回の記事は評価に値する。堀記者の今後に期待したい。
※今回取り上げた記事「運用お任せ『ラップ口座』残高急増 見えづらい費用確認を」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170517&ng=DGKKZO16500700X10C17A5NZKP00
※記事の評価はB(優れている)。堀大介記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Bへ引き上げる。堀記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
バランス型は「可変型が優位」? 日経 堀大介記者に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_28.html
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