2017年4月19日水曜日

「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い

日本経済新聞の梶原誠氏(肩書は本社コメンテーター)は根本的な勘違いをしているのではないか。そう思わせる記事が19日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載っていた。「Deep Insight~グローバル・ファーストへ」という記事では、GDPに対する株式時価総額の比率が上昇しているインドに関して「市場がグローバルマネーを巻き込んで経済全体を底上げしてきた結果だ」と解説している。この見方は正しいのだろうか。
有明海沿岸道路(福岡県大牟田市)
       ※写真と本文は無関係です

記事の当該部分を見てみよう。

【日経の記事】

インドの代表的な株価指数、SENSEXは今月、2年ぶりに史上最高値を更新した。市場がグローバルマネーを巻き込んで経済全体を底上げしてきた結果だ

1988年の株式時価総額は、国内総生産(GDP)の8%にすぎなかった。それが昨年の71%まで上昇し、株式市場の存在感は高まった。外国への市場開放など改革を進めた結果だ。同国経済の原動力である起業家精神も、株式公開の舞台が育ったからこそだ。



◎「底上げ」できていないような…

市場がグローバルマネーを巻き込んで経済全体を底上げしてきた結果」として、「1988年の株式時価総額は、国内総生産(GDP)の8%にすぎなかった。それが昨年の71%まで上昇し、株式市場の存在感は高まった」と梶原氏は解説する。だが、これは奇妙だ。

普通に考えれば、「市場がグローバルマネーを巻き込んで経済全体を底上げ」してくれる存在ならば、株式時価総額の伸びと歩調を合わせてGDPが増えても良さそうなものだ。しかし、GDPの伸びは時価総額に大きく後れを取っている。

「GDPの伸びは低水準だが、それでも伸びたのは『市場がグローバルマネーを巻き込んで経済全体を底上げしてきた』からだ」との弁明はできる。だが、そう信じられる根拠は示していない。インドの場合は「株式市場が盛り上がっているのと比べると、経済全体は底上げされていない」と解釈する方が自然だ。

記事に付けたグラフでは「株式市場はインド経済をけん引した」とのタイトルを付けて、「インド株相場」と「時価総額のGDP比」を見せている。ここからは「時価総額のGDP比が上昇する=インド経済が伸びている」との印象を受ける。しかし、そういう関係は成り立たない。GDPの伸び率が株式時価総額の増加率を上回ると、この比率は低下する。だからと言って、インド経済が成長していないわけではない。

一般的に「時価総額のGDP比」は株式相場の過熱感を見る指標として使われる。なので「株式相場の上昇は経済成長のスピードを上回っており、割高感が出てきている」といった解説はできるかもしれない。だが、「株式市場はインド経済をけん引した」のかどうかを読み取るのは無理がある。


※今回取り上げた記事「Deep Insight~グローバル・ファーストへ
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170419&ng=DGKKZO15469790Y7A410C1TCR000

※この記事については以下の投稿も参照してほしい。

日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html


※梶原誠氏については以下の投稿も参照してほしい。

日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html

読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html

ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html

似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html

勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html

国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html

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