流川桜並木(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です |
【エコノミストへの問い合わせ】
4月18日号の「すごい新素材~セルロースナノファイバー 紙おむつ、化粧品から自動車まで 1兆円市場にらみ量産化へ」という記事についてお尋ねします。筆者でジャーナリストの吉田智氏は記事の中で「日本が世界に誇る炭素繊維は、商用化までにほぼ半世紀を費やした」と書いています。
炭素繊維協会のホームページによると、国内の先行企業である東レが「炭素繊維の研究に着手」したのが1961年で、「"トレカ"の商品名でCF商業生産開始」が1971年です。これを基に判断すると「商用化までほぼ10年」です。東レのホームページには「大阪工業技術試験所 進藤昭男博士が炭素繊維を発表。これがPAN系高性能炭素繊維の始まりです(1961年)」との記述もあります。ここから考えても「日本が世界に誇る炭素繊維」の出発点は1961年頃でよいはずです。「商用化までほぼ半世紀」だとすると、商用化の時期は2010年頃になってしまいますが、あり得ません。「日本が世界に誇る炭素繊維は、商用化までにほぼ半世紀を費やした」という記事の説明は誤りだと理解してよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。
御誌では読者からの間違い指摘を無視する対応が続いています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。
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筆者の吉田氏は「日本が世界に誇る炭素繊維は、利益を生み出す事業に育てるまでにほぼ半世紀を費やした」と言いたかったのではないか。これならば分かる。だが、赤字が続いたり、市場規模が小さかったりしても「商用化」を否定する根拠にはならない。販売を始めていれば「商用化」はできているはずだ。
日経ビジネス4月10日号の「企業研究~日本製紙 新素材で紙頼み脱却」という記事でもセルロースナノファイバーを解説する中で炭素繊維に触れ「日本発の新素材」という誤った説明をしていた。偶然だろうが、炭素繊維に関しては誤った認識がを持たれやすいのかもしれない。
「製紙メーカー」というダブり感のある表現を用いている点でも2つの記事は共通する。「製紙メーカー」「製薬メーカー」といった表現は定着したと見るべきかもしれないが、どうもしっくり来ない。「製紙会社」「製薬会社」で通じるのだから、こちらを使ってほしい。
※結局、問い合わせに対する回答はなかった。記事の評価はD(問題あり)。吉田智氏への評価も暫定でD(問題あり)とする。なお、日経ビジネスの記事については以下の投稿を参照してほしい。
炭素繊維は「日本発」? 日経ビジネス「企業研究~日本製紙」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_7.html
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