2017年4月1日土曜日

「完全雇用」の説明が雑な日経「雇用逼迫が成長の壁」

「失業率は2.8%で、働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われている完全雇用の状態」と言われると、何か矛盾を感じないだろうか。働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われているのならば、失業率は0%になってもいいはずだ。
九州国立博物館(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

1日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「雇用逼迫が成長の壁 失業率22年ぶり低水準」という記事では、「失業率が2.8%になった」ことを受けて「働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ、これ以上は失業率が下がりにくい『完全雇用』といわれる状況だ」と解説している。となると、「2.8%」の失業者は「働く意欲と能力を持つ人」ではないはずが、そうだろうか。

間違いと言うのはやや酷かもしれない。ただ、不正確な説明なのは間違いない。日経に問い合わせを送ったので、その内容を見てほしい。

【日経への問い合わせ】

1日の朝刊総合2面に載った「雇用逼迫が成長の壁 失業率22年ぶり低水準」という記事についてお尋ねします。この中に「失業率が2.8%になったのは1994年6月以来、22年8カ月ぶりだ。働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ、これ以上は失業率が下がりにくい『完全雇用』といわれる状況だ」との記述があります。

「完全雇用」が「働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ」た状況を指すのであれば、失業率は0%になるのではありませんか。失業率の算出に当たっては「失業者=働く意思と能力があるのに仕事に就いていない人」と考えます。「働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ」ているのに、労働力人口の「2.8%」が失業することはあり得ません。

記事で言う「完全雇用」とは「働く意思があるにもかかわらず、賃金水準に不満を持ち働かない自発的失業や、転職や労働条件の不一致から一時的に働かない摩擦的失業を除き、労働の意思と能力のある者がすべて働いている状態のこと」(野村証券の証券用語解説集)ではありませんか。

自発的失業や摩擦的失業に触れずに「働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ」と書いたので「失業率2.8%」という数値と矛盾が生じたのでしょう。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの認識であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

経済紙なのだから、経済関連の用語解説には一般紙以上の正確さを求めたい。


※結局、回答はなかった。記事の評価はD(問題あり)。この記事については以下の投稿も参照してほしい。

ツッコミどころが多い日経「雇用逼迫が成長の壁」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_2.html

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