大宰府政庁跡(福岡県太宰府市) ※写真と本文は無関係です |
まず最初の段落を見てみよう。
【日経の記事】
世界の市場が株高に沸いている。トランプ米大統領の演説を受けて米国株は過去最高値を更新。日経平均株価も2日、年初の高値に接近した。新興国株にも資金が還流し、世界の株式時価総額は過去最大まであと一歩に迫る。底流にあるのは世界景気の拡大と財政出動への期待だ。ただ、株式などリスク資産から金のような安全資産まで上昇する現状には、投資家の不安心理も垣間見える。
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「株式などリスク資産から金のような安全資産まで」との記述が引っかかる。この書き方だと「金は非リスク資産であり安全資産でもある」と解釈するしかない。しかし、金は元本保証でもなければ、値動きが極めて小さいわけでもない。金が「リスク資産」ではないのならば、日経はどういう定義で「リスク資産」という言葉を使っているのだろうか。
記事では「株式などリスク資産から金のような安全資産まで上昇する」と解説し、記事中のグラフには「17年に入りあらゆる資産が上昇」とのタイトルを付けている。しかし、グラフに出てくるのは株式、原油、金だけで債券がない。「あらゆる資産が上昇」と訴えるならば米国債ぐらいは入れてほしい。国債は代表的な「安全資産(非リスク資産)」でもある。
この記事で債券に触れているのは以下のくだりだけだ。
【日経の記事】
世界の金融市場は「トランプ相場・第2幕」の様相だ。米大統領選後の「第1幕」では米国債や新興国株から先進国株へ資金がシフトした。だが年明けから様子が一変。株式から安定利回り狙いの不動産投資信託(REIT)まであらゆる資産に資金が流れ込む。
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この書き方だと年明け後は米国債も値上がりしているように感じられる。そう明言していないのは「あえて」だと思える。ちなみに、3日の電子版に載った「NY債券、続落 10年債利回り2.47%、2年は7年9カ月ぶり高水準 」という記事では以下のように説明している。
ノートルダム大聖堂(アントワープ)のステンドグラス ※写真と本文は無関係です |
【日経(NQN)の記事】
2日のニューヨーク債券市場では長期債相場が4日続落した。長期金利の指標となる表面利率2.250%の10年物国債利回りは前日比0.02%高い(価格は安い)2.47%で終えた。米連邦準備理事会(FRB)高官らの発言を受け、3月の追加利上げ観測が強まった。金融政策の影響を受けやすい2年債の利回りは一時1.34%と、2009年6月以来およそ7年9カ月ぶりの高水準を付けた。
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この記事を読む限り「(債券を含む)あらゆる資産が上昇」する状況だとは考えにくい。10年債で見ても17年に入ってわずかに値下がり(利回りは上昇)しているようだ。1面のトップ記事に仕立てる上で「債券」が邪魔だったのは分かる。だからと言って「あらゆる資産が上昇」はやり過ぎだ。東証REIT指数も年明け以降は下落基調だ。
※今回取り上げた記事「世界株 時価最大に迫る 米財政出動に期待先行 安全資産 同時高に懸念も」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170303&ng=DGKKASDC02H0K_S7A300C1MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。
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